カルビーは19円で持ち分を売却した

撤退の方法として、清算より現実的なのが持ち分譲渡だ。合弁パートナーや第三者に持ち分を譲渡すれば、会社自体が存続するため、当局の許認可は比較的下りやすい。しかし中国で持ち分譲渡する場合は、買い叩かれることを覚悟しておかなければいけない。

「中国企業で日本の取締役会にあたるのが董事会です。董事会のメンバーは持ち分比率によって決まり、通常は過半数で議案を決議できます。しかし、中国側パートナーとの合弁会社の場合、清算や持ち分譲渡といった重要事項については全員一致が原則。売却相手の中国側パートナーが董事会に1人でもメンバーを送り込んでいたら、その意向は無視できないので、よけいに足元を見られやすい」

昨年11月、カルビーは杭州市に設立した合弁会社の持ち分を合弁パートナーに譲渡した。カルビーの持ち分は51%だったが、譲渡価格は1元(約19円)だった。

「合弁パートナーが国有企業だと、さらに当局との絡みがあって買い叩かれる傾向が強い。これから中国に進出しようとする日本企業は、合弁パートナーがいたほうがコネを使えて有利ですが、将来、撤退の可能性も視野に入れるなら、単独で進出するほうが結果的によかったというケースもあるでしょう」

(図版作成=大橋昭一)
【関連記事】
なぜ中国人は平気で壊すのか? 兵法三十六計の行動原理
海外進出は自前で展開するべきか。現地企業と組むべきか
なぜ大林組は伸び盛りの中国市場から撤退したのか
日本人社員座談会「中国企業で働くということ」
なぜ中国駐在1年内に「心の危機」が起きるのか