単に英語ができればいいのではない

三宅義和・イーオン社長

【三宅】そういう地道な努力が大事なのですね。

【大六野】この実績はアジアにも通用するわけです。例えば、タイの東大と言われるチュラーロンコーン大学とか、タマサート大学。最初は、相手にすらしてくれなかったんですが、カリフォルニア大学での状況を知ると突破口が開け、タマサートとは、おそらく来年あたりからダブルディグリーがスタートするかもしれません。

【三宅】政治経済学部が明治の国際化を担ったということですね。海外留学をした学生が、2008年は49人。14年は152人。で、15年は175人と、着実に実績を伸ばしている。その背景には、先生がおっしゃられたような取り組みがあったわけですね。

【大六野】ほかの学部も頑張りましたよ。うちの大学を山に譬えると、富士山のように1つの巨大な塊ではなく、日本アルプスのような連峰と言っていいでしょう。各学部がそれぞれに存在感を出し、全体で見ると、よくまとまっているわけです。商学部も力を入れているし、法学部などは学問的になかなか国際化するのは難しいのですが、ケンブリッジ大学などで交流プログラムを実施しています。

【三宅】さて、話題を大学受験に切り換えたいと思います。現在、中央教育審議会の高大接続部会で審議が続いておりまして、現行のセンター試験が20年から廃止。とりわけ英語は、読む、書く、聞く、話すという4技能測定に舵を切ろうとしています。

明治大学では、今年4月1日に経営学部の一般選抜入試に「英語4技能試験活用方式」を採用しました。英検、TEAP、TOEFL iBT、IELTS、TOEICとTOEIC SWのいずれかにおいて、スコアが所定の基準を上回る受験生については「外国語」の試験を免除するとして、非常に大きなインパクトのあるニュースになりました。その意味では、国より私学の動きのほうが先行しているというふうに思います。

さらに、明治大学は、文部科学省が始めたスーパーグローバル大学創成支援事業にも選ばれています。先生の目には、今回、国が進めている大学入試改革はどう映っていますか。

【大六野】大学入試改革については、何度も議論が繰り返されてきました。僕は不毛な議論はやめたほうがいいという立場です。4技能重視というのであれば、それが本当に国際性につながるかどうかという視点で考えるべきでしょう。私は、4技能は間違いなく重視されていくと思います。明治大学では政治経済学部も、わずか20人枠の特別入試ですけれども、グローバル入試を来年度から始めます。また、国際日本学部は、今までは海外の学生が来ていますが、日本人の学生を相手にして、英語だけの入試を始めます。

こうした動きが広がっていくことは時間の問題でしょう。30人、40人という段階から、おそらく1000人ぐらいの定員があれば、そのうちの200人ぐらいはそうなるのではないか。2割という数字は、明治大学でいうと、2万8000人のうち5600人。この選抜を4技能で行うとなれば、高大連携も密にならざるをえないでしょう。

それよりも問題なのは、グローバル化の時代、外国と一緒に仕事をするとなれば、正解がないところから、答えを見つけ出していける教育が求められます。それを大学まででどう作り上げていくか。単に英語ができればいいのではなく、総合的にすぐれた人材の育成が必要となります。