病気は自分にサインを送っている証拠

体調を崩したり、病気になるというのは、体が私たちにサインを送ってくれている証拠です。しかし、顕在意識でいくら考えたところで病気の原因はわかりません。病気になった本当の理由や、本当の望みを潜在意識の奥深くに探しに行くのが催眠療法で、私はそのガイド役です。普段から、自分で病気の原因を探りたいとか、悩みに対するアドバイスを知りたいときは、催眠状態になって自分に質問をすれば、皆さんも答えを得られるはずです。

イメージ療法を使うと、自分の臓器やがん細胞などと対話をすることもできます。たとえば、肺がんの人が、肺をひとつの部屋と見立て、肺の中にあるがんと会話をするというものです。がん細胞も体の一部なわけで、がん細胞にも感情、人格があるものと仮定して行います。ある患者さんは、がん細胞と対話をしていくうちに、がんに愛着を持つようになりました。がんに名前をつけ、可愛がっているうち、彼女のがん細胞は大きさは変わらないものの、症状が出なくなりました。彼女はがんとどう向き合っていけばいいのか、自分なりに何かを見つけたようでした。

催眠から覚めたとき、催眠中に行われた会話を記憶していて、その内容が腑に落ちたら、患者さんに変化が現れはじめます。がん細胞が小さくなる、生き方が変わる、症状が落ち着くなど、変化の内容はさまざまですが、がんが消えないにしても、「生きることが楽になった」とか、「死というものはそんなに怖いものじゃないと思えるようになった」など、肯定的な変化が見られるようになります。

クリニックを開設してから「がんになって良かった」と言う患者さんが多くいて、驚かされています。勤務医をしていたとき、そんなことを聞いたことが一度もなかったからです。病気からある程度の恩恵を受けたとしても、治療や症状の深刻さから「大変な病気」と否定的になる方が多いのですが、得たものの方が病気よりも大きく感じられるようになると「がんになって良かった」と思えるのかもしれません。

もうひとつ私が驚かされていることがあります。多くの患者さんたちは最終的に、「ダメな自分も認めてあげる」ことができるようになっています。人生に悩みは尽きないし、感情がなくなることもありません。しかし、そんな自分も愛して、認めてあげられるようになると、生き方は大きく変わり、道が開かれていくようです。

萩原優(はぎわら・まさる)
医学博士。広島大学医学部卒業。聖マリアンナ医科大学第一外科にて消化器外科、内視鏡診断・治療・緩和医療に従事し、第一外科講師、消化器外科准教授を経て外科部長に。30年以上にわたり3000件以上の手術に関わる。2005年同大学病院を退職。2006年から1年間、非常勤としてホスピスで働いた後、2007年にイーハトーヴクリニック(http://ihatovo-clinic.com/)を開院した。がん患者のためのNPOほあ~がんサポートネットワークも運営している。著書に「前世療法の奇跡」(ダイヤモンド社)など。
(取材・構成=田中響子)
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