日本のアニメやマンガ、ポップミュージック、映画、ファッションや料理、建築等が「ジャパニーズ・ポップカルチャー」として世界的に高い人気を集めています。現代アートの分野でも「Japanese Pop」として人気が出ているのは、クール・ジャパンの要素を取り入れた、アニメやマンガの影響があるものです。(私が2006年に英語版として出版した「Warriors of Art」/講談社インターナショナル刊 に詳細は書かせていただいています)

また、「日本画」の系譜を紐解く作品も注目されています。例えば、油絵の具を使いながら、大和絵や武者絵と現代が時空を超えて混在する作風の山口晃、力強い墨の線が印象に残る町田久美、言葉遊びや伝統的風習をポップな現代に置き換えるミヤケマイなど、新しい日本画と呼ばれるべきグループが出現してきています。

1867年のパリ万博では、日本の文物が展示され、浮世絵、きもの、扇子などの日本のものすべてがスタイリッシュでファッショナブルとされたジャポニズムブームが起きました。浮世絵の葛飾北斎の富嶽36景「神奈川沖浪裏」はドビュッシーの楽譜の表紙に使われたり、その後のモネなどの印象派やゴッホなどの後期印象派に大きな影響を与えました。

今年は日仏修好通商条約締結150周年ということで、パリ市内のギメ美術館、プチパレなどで伊藤若冲や丸山応挙などが改めて大きな人気を博しています。現代のパリのジャパニーズエキスポには12万人が集まり、コスプレや最先端のゴスロリファッション、そしてマンガやアニメの人気が新しいジャポニズムブームを巻き起こしています。

天明屋尚 「分身」(部分)書籍『Warriors of Art』の表紙(Courtesy of the artist and Mizuma Art Gallery)
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天明屋尚 「分身」(部分)書籍『Warriors of Art』の表紙(Courtesy of the artist and Mizuma Art Gallery)

日本画の新しいアーティストとして、天明屋尚がいます(前出の私の著書の表紙に作品を使わせていただいた方です)。天明屋さんは2006年FIFAワールドカップドイツ大会の時に、世界で活躍している現代アーティストに依頼する公式ポスターを担当しました。彼の作品を一躍有名にしたのは2003年ニューヨークのホイットニー美術館で行われた展覧会「アメリカン・エフェクト」です。この時、NYタイムズの文化面で特集が組まれました。この展覧会は「アメリカン・エフェクト(アメリカの影響)」として、まさにアメリカのポップカルチャーの影響を受けたアーティスト達を選んで行われた企画展でした。

こうした企画には、アメリカ文化の他の新興文化に対する優位性を示唆する内容が潜んでいるのですが、ぜひ日本の美術館関係者には「ジャパニーズ・エフェクト」の展覧会を出来るだけ早くに開催していただきたいものです。

天明屋さんの作風は「ネオ日本画」と呼ばれていますが、厳密な意味では日本画とは呼べません。「日本画」の意味は広辞苑によると「明治以後にヨーロッパから入った西洋画に対し、わが国従来の技法・様式による絵画。墨や岩絵の具を主として、若干の有機色料を併せ用い、絹・紙などの上に毛筆で描く」とあります。明治時代以前には「日本画」という言葉はありませんでした。まさに鎖国が廃止され、文明開化が始まり、西洋化の流れの中に登場する西洋画に対抗するものとして、日本画は出てくるのです。

また和紙に岩絵の具で描く技法を日本画と呼びますので、天明屋尚のようにキャンバスにアクリル絵の具で描いている技法は日本画とは呼べないことになります。