企業の中で分析を担当する「データサイエンティスト」が近年注目を集めている。彼らは様々なデータをどのように分析し、業務に役立てているのだろうか。ビッグデータ活用の先進企業である花王、タワーレコード、日本航空(JAL)のデータサイエンティストに、データ分析について語ってもらった。

この3社はデータ分析で確かな成果を挙げている。花王は、分析結果を漂白剤「ワイドハイターEXパワー」の宣伝や販促に生かすことで、売り上げを増やした。タワーレコードは、顧客向けの販促メール作成に分析結果を生かしている。

JALは自社のサイトを訪れる利用者の中から、海外旅行に行く女性を対象としたパッケージツアー「女子旅@海外」の潜在的な顧客をデータ分析によって絞り出した。女性だけでの海外旅行を指す「女子旅」に行く可能性が高い利用者をターゲットに、専用のバナーを作成。その結果、売り上げを大きく伸ばすことに成功した。

データサイエンティストたちはコンピュータを使った高度な分析を駆使することによって、成功を生み出していると思われるかもしれない。だが、実情は大きく異なる。どの会社も、データ分析の専門家が、現場の社員とディスカッションを重ねたり、自ら業務知識を蓄えることで、分析の効果を最大限に高めている。机に座ってキーボードを叩いているだけでは、優れた分析をすることはできないのだ。

また、データサイエンティストが行う分析それ自体も、専門的な知識や、難解な計算が必要なものばかりではない。JALの旅客販売統括本部Web販売部1to1マーケティンググループの渋谷直正アシスタントマネジャーは「エクセルなどでも可能な、“クロス集計”を最も頻繁に使う。“ロジスティック回帰”“アソシエーション分析”などの専門的な手法も使うが、なんと言ってもクロス集計が多い」と話す。クロス集計とは、例えば横軸を性別、縦軸を販売店舗として、販売個数を店舗別・性別に集計する手法だ。

これはつまり、ごく一般的なツールのみを使っても、業務の知識さえあれば、仕事に役立つデータ分析は可能だということだ。今回、3社のデータサイエンティストに、「もし今後転職して、全く別の職種に就いたとき、周りに協力者がいないような状況でも分析はしますか」と聞いた。答えは全員「イエス」。「データ分析はすべての人の武器になる」、これが彼らデータサイエンティストの信念だ。

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