「まち」の最小単位は「近所付き合い」?

前回(http://president.jp/articles/-/18039)ご紹介した、福井県鯖江市の体験移住事業「ゆるい移住」プロジェクトの参加者の1人が、面白いことを教えてくれました。

彼は、「まちづくり」という言葉のあいまいさにごまかされることなく、自分と「まち」との関わりの中で、より現実的で確かなものを捉えようとしていました。そして、彼はそれを「近所付き合いだ」と言いました。

「まち」なんて意識しなくても、近所の人に会えば挨拶するし、お隣からうるさい音がすればストレスを感じます。そして、お互いがご近所にあまり迷惑をかけないように気を配りながら「人間としての付き合い」を積み重ねことによって、自分たちが生活するまちのコミュニティが成り立っている。彼には、「まち」の最小単位である「近所付き合い」をおろそかにして「地域やまちを元気にしたい!」などと言うことが、とても滑稽なことのようでした。

そして彼は、体験移住の期間中、共同生活をしている団地内で「共有」する空間や時間をとても大切にしていました。共有通路の脇の草むしりや、団地の駐輪場に置かれた自転車の整理を黙々と行い、団地で行われるイベントなどにもみんなで参加して楽しんでいました。そして、「よそ者」たちの移住に不安を感じていたご近所の人たちにもすっかり気に入られて、いつの間にか一緒に「宅飲み」を楽しむようにまでなっていたのです。

そんな「近所付き合い」や気配りを、なんか面倒くさいなぁと感じる人もいるかと思います。でも、「まちづくり」なんてそもそも、人間同士の湿度を感じる、ものすごくウェットで面倒くさいものなのだと思います。その面倒くささを楽しめる人だけが、「まちづくり」なるものを考えたり、語ったりすればいいのではないでしょうか。