「孫子の兵法」というと、日本人がまず思い浮かべるのが、「風林火山」の一節だろう。戦国武将の武田信玄の旗印だ。信玄の本拠地は甲斐の国。現在の山梨県である。

「その疾きこと風の如く、 その徐かなること林の如く、 侵掠すること火の如く、 動かざること山の如く」

信玄の目には、雄大な富士山が映っていたはずだ。

日本列島のど真ん中にドーンと鎮座する富士山。私も、富士山の如く、揺るぎない人間になりたいものだ。私が「孫子の兵法」の執筆準備を進めている頃、「社長室に飾ると会社の業績が上がる」と評判の富士山の写真家に出会った。ロッキー田中氏である。氏の撮った富士山の写真に、多くの経営者は虜になっている。

以前は、社長の応接室というと、富士山の絵と大理石でできた高級灰皿があるのは当たり前だったのだが、最近ではそうではないらしい。人間が小粒になってきたということなのだろうか。企業のトップリーダーたるもの富士の絵の前にドッスリと座り、悠然とタバコを吸ってほしいものだ。威厳なくして組織の長など務まるはずがない。尊敬の念もなく、ただカネのため、自分の地位のためだけに、人間が働き続けることなどできない。

富士山の写真を飾るだけで、会社経営が実際にうまくいくという夢のような話を伺った。

No.1セールスになぜ、富士山が必要か

【飯島勲】なぜ、富士山を撮影するようになったのですか。

ロッキー田中氏(写真右)と、筆者。

【ロッキー田中】私はもともと富士ゼロックスに勤めるサラリーマンでした。営業マンとして相手先の会社を訪問すると、業績が伸びている会社には必ずと言ってよいほど富士山の絵がありました。そこで、商談の際に富士山を話題に出したらお客様との会話が進むようになり 、次第に成績も上がりました。ついには富士ゼロックスの営業マン1500人の頂点に立つことができました。今から何十年も前の話ですが。

【飯島】それは富士山のご利益でしたね(笑)。しかし、なぜ経営者は富士山が好きなのでしょう。

【ロッキー田中】規模の大小を問わず経営者は自分の会社を日本一にしたいと思っています。その思いと富士山の姿が一致します。360度の全方位から同じような美しい姿で見える世界で唯一の山、この姿が人々に気づきと喜びを与えていますね。