またパナマ文書には習近平国家主席以下、中国共産党の要人が関連する企業も多数登場する。腐敗一掃を掲げてトラ(党要人)やキツネ(海外に逃亡した汚職官僚)を狩ってきた現指導者も一族郎党で不正蓄財に励んでいた証拠だ。国内への影響を恐れて、中国政府はパナマ文書を黙殺している。報道規制も敷いているようだが、ネットなどを通じて国民に知れ渡るのは時間の問題。国民の不満の高まりが体制崩壊に直結しなくても、パナマ文書の影響で政権がもたつくようなことになれば、ただでさえ減速している中国経済が世界経済に与える影響は計り知れない。

問題はパナマのような租税回避地はマレーシアのラブアン島なども含めれば世界中に30近くあり、モサック・フォンセカのような法律事務所も多数ある、ということだ。つまり今回のパナマ文書問題は氷山の一角で、国家が国民を管理する「国民国家」という大前提の制度を蝕む恐ろしい病原体、という認識を持たねばならない。今後は見えてきた部分だけではなく、抜け道となっている制度や法律をG20などの会議体でつぶしていく膨大な作業が必要となる。

(小川 剛=構成 AFLO=写真)
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