メゾンのブティックは時代とともに変化する

去る3月31日、フランスの高級宝飾・時計メゾン、ヴァン クリーフ&アーペルの銀座本店が移転リニューアルオープンを果たした。旗艦店と位置付ける同店が建つのは、東京・銀座の中央通りに面する一等地。メゾンの象徴的なモチーフであるロザンジュ(菱形)パターンを散りばめたファサードが美しく、銀座を行き交う人々の足を止める。店内は外光をふんだんに取り入れる設計で開放感があり、木材の質感を生かして曲線を多用したインテリアが高級感を醸しながらもどこか優しげな印象を与えている。エクスクルーシブなイメージが強い従来のメゾンのブティックとは一風変わった、現代的で居心地の良い空間だ。

東京・銀座に新しいブティックが誕生。店内はほとんどのコーナーが曲面で構成され、温かみのある空間が広がる。ヴァン クリーフ&アーペル 銀座本店 住所:東京都中央区銀座3-5-6 電話:03-3563-1906

店内を見て回っていると、内装以外にも新しさを感じる部分がある。それがフロアごとの商品構成についてだ。一般的に、時計や宝飾などの高額品を扱うブランドのブティックでは、1階にはブライダル関連商品や手ごろな価格帯の商品を並べて入店しやすい雰囲気をつくり、高額品や限定品などの特別な商品は上階にディスプレーすることが多い。防犯上の理由に加えて、特別な顧客には人気の少ない落ち着いた空間でゆっくりと商品を見てもらいたいという配慮があるからだ。だが、このヴァン クリーフ&アーペル 銀座本店には、1階にもところどころにハイジュエリーがディスプレーされている。数十万円からウン千万円までの商品が同じフロアに並べられているのである。

銀座本店のリニューアルオープンからおよそ2カ月、ヴァン クリーフ&アーペル ジャパンのプレジデントを務めるアルバン・ベロワー氏にインタビューを試みた。2015年9月に氏が現職に就任しておよそ8カ月を経た今、日本マーケットの分析と戦略、そして銀座本店について伺うためだ。フロアごとの商品構成など些細なことのように思われがちだが、じつはそこにはベロワー氏の日本戦略がはっきりと映し出されていた。