そうなるとオバマ氏の広島訪問にはどのような意義があるのか。どう考えても被爆者への寄り添いしかないよ。

本当は謝罪するのが一番。それができなくても原爆投下の過ちを認め、当面は核保有が必要だとしても、二度と原爆投下ということがないようあらゆる努力するというメッセージを出すしか意義はない。

ここでアメリカ側は謝罪はもちろん原爆投下の過ちを認めることはできない、となるだろうね。ここでロジックなんだ。

「原爆投下時の状況ではやむを得ない事情があっただろう。でも現代的な価値では認められないよね、だから二度と同じことが起きないようにあらゆる努力をしないといけないよね」と。

戦争責任では僕は、為政者と国民を分ける二分法(二分論)のロジックが持論。もちろん不戦の決意は必要だけれども、戦争に関与していない国民が永久に謝罪する必要はない。しかし為政者には永久に謝罪の念を持ってもらう。それは権力者への最も強力な歯止めとなる。権力行使は、権力者のメンタルに最も左右されるからね。

これと同じように、僕は時的評価においても二分法(二分論)を採るのが持論。

「当時はやむを得ない事情があった。しかし現代的価値観では認められない(過ちである)ことを率直に認める。ゆえに将来的には二度と同じことが起こらないようにあらゆる努力をする」

広島の原爆投下による被害が、現代的価値観で認められないのは論を俟たない。でもじゃあすべて誤りかと言えば、当時の状況ではそうとは言えない事情もある。ここをうまく整理するロジックを使わないから、原爆投下は正当だという主張と、原爆投下を謝罪せよという主張がぶつかり合う。

時点をずらせば、この両主張はぶつかり合わない。そして当然、日本サイドも同じスタンスで過ちを認める。

ということで、オバマ大統領の広島訪問における大統領・安倍首相の共同スピーチの骨子は以下の通り。

「広島・長崎での原爆投下は当時はやむを得ない事情があったにせよ、現代的価値からすれば過ちであり、二度と同じことが起きないようあらゆる努力をする。現在の世界情勢では、当面、核兵器は必要であるし、日本はアメリカの核の傘に入る必要があるが、将来核兵器を廃絶する理想を実現するためにあらゆる努力を惜しまない」

こんなふうに真正面からメッセージを出した方がいいと思う。僕のスピーチ原稿、どうですかね?

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.8(5月24日配信予定)の一部です。

(撮影=市来朋久)
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