常連中国に次いで2番目に日本が挙げられた

まず、報告書の公表は2016年4月29日(現地時間)であり、ドル円の為替レートはすでに110円を割った水準だった。報告書は基本的には15年下半期から16年3月末時点までのデータを元に分析したものだが、この間のドル円レートと言えば125円台から110円台へと急激に円高方向へと動いた時期と重なる。今年1月に入って日銀のマイナス金利導入発表以降の急激な円高方向へのシフトも踏まえた上で、一連の動きに関して、

Japanese authorities characterized exchange rate movements as“quite rough”and said that they “continue to watch the foreign exchange market with a sense of tension,
and …… act appropriately if that becomes necessary.”(17~18p)
(日本当局は為替レートの動きは「かなり荒っぽい」と特徴づけ、「緊張感を持って相場を見続ける……必要になった場合の適切な行動をする。」と発言している)

と日本側の発言を引用した直後に

Treasury assesses that current conditions in the dollar-yen foreign exchange market are orderly,(18p)
(米財務省は現状のドル円の為替市場は秩序だっていると評価している)

と行き過ぎたドル高からの水準訂正を是認。日本の当局の発言に釘を刺した形となっているのが象徴的でもある。

「監視リスト」入りした各国だが、報告書での掲載順にChina, Japan, Korea, Taiwan, and Germanyとなっている。最初の4カ国までを見ればアルファベット順かと思うのだが、最後にドイツが登場するため、別の思惑があっての列挙というのがわかる。中国は過去十数年、経済制裁の対象となる「為替操作国」までになることはないにしても、寸前の段階であり、この報告書では毎回のように名指しされる言わば常連だ。というわけで、中国の名前が筆頭に挙がっても何ら驚くには値しないのだが、その中国に次いで2番目に登場したのが日本となれば、この位置関係をどう捉えるかで報告書の見方も変わってこよう。

日本経済に関する具体的な記述としては下記の評価が登場する。

Demand also remains weak in Japan, with consumption especially hit hard following the April 2014 hike in the consumption tax.(3p)
(日本の需要は弱いままであり、14 年4月からの消費税増税以降、特に消費に打撃がある。)