液晶パネルは半導体とともに典型的な設備集約型産業であり、労働集約型のそれと違って、最新鋭ラインへの大型投資を継続することによって生産性向上を図ることが可能となり、それが競争力の源泉となる。

よって筆者は、シャープが液晶テレビ事業の垂直統合モデルの下で、液晶パネルの国内投資を推進した戦略自体が間違っていたとは思わない。

液晶パネルなどの「過剰投資」という論調を受けて、大手家電メーカーが薄型パネルの量産投資、ひいては設備集約型事業から手を引くのは極めて危険であると考える。アップルが10年度以降、キーデバイスの専用工場への大規模な投資を開始したように、今も家電産業において、キーデバイスとセット製品の接点・擦り合わせがイノベーションの源泉であることに変わりはない。

そもそも設備集約型事業は、安価な労働力や電力費などが決定的な競争優位をもたらす事業と異なり、事業戦略次第で国内立地でも競争力を確保できるはずだ。後述する製品企画開発力を取り戻すことができれば、国内での垂直統合モデルは十分可能である。

シャープの堺工場にもう一度話を戻そう。同工場は、畳5枚分に相当する世界最大の第10世代マザーガラスを採用した世界唯一の工場で、大型パネルの効率生産が強みだ。同工場は堺(当初はシャープ)ディスプレイプロダクト(SDP)という別会社に分社化されている。

シャープの経営危機の大きな契機は、堺工場の低稼働による収益悪化だった。同工場建設の判断自体は間違っていなかったと筆者は考えているが、それでは何が問題だったのか。

まず環境面では、08年のリーマン・ショック後の韓国ウォンに対する急激な円高だ。韓国勢に対する価格競争力が著しく低下し、資本費負担が重い操業初期の堺工場にとって間違いなく大きな誤算となった。

そして根本的な内部要因は、世界の液晶テレビメーカーに向けて本格的に外販を行う「グローバル液晶パネルベンダー(供給業者)」への脱皮を図れなかったことではないか。