次に、堺工場への投資はどう評価すべきか。亀山工場(04年稼働開始)に続き、09年に大型テレビ向け液晶パネルの世界最先端工場として稼働開始した堺工場。4200億円という巨額の設備投資であったことは事実だ。亀山工場、堺工場と相次いで先端工場を立ち上げたシャープは、確かに国内メーカーの中では大型投資を牽引してきたとの印象が強い。

しかし、LG、台湾の友達光電(AUO)、鴻海傘下の群創光電(イノラックス)など海外の大手競合メーカーは、00年代以降、おおむねシャープを上回る規模の投資を続けている(図参照)。ソニー、東芝、日立製作所の液晶事業を統合して発足したジャパンディスプレイと比べても、12~14年度の設備投資はシャープが大幅に下回っている。

つまり、世界の競争相手に目を向ければ、これまでのシャープの投資規模は、堺工場への投資を含めても決して過剰ではなく、むしろ過小であったと考えられる。

特に不況局面では、日本メーカーは決算対策のため設備投資を削減し、減価償却費を抑制する傾向が強い。それは、目先の決算数値のために先行投資を犠牲にしてしまうことを意味する。一方、有力な海外メーカーは決して投資の手を緩めない。08年のリーマン・ショック以降、そうした傾向がより鮮明になっている。

中国メーカーの台頭などによる過当競争もあり、大手液晶パネルメーカーの収益性はリーマン・ショック以降低下傾向にあり、設備投資も00年代前半に比べ切り下がっているが、LGディスプレイは比較的高水準を維持している。一方、シャープの設備投資は、07年度をピークに低下傾向を辿っている(図参照)。

この正念場で攻めの投資を続けられなかったことが、シャープの苦境を招いた原因の一つと考えられる。