土地活用を始めるにあたって、どんな賃貸住宅を建てるか。建築費も高騰するなか、コストは極力抑えたいが、一方で数十年先を考えれば品質にもこだわりたい──。これがあらゆるオーナーの共通の思いだろう。そうしたなか、注目を集めているのがPC(プレキャスト鉄筋コンクリート)工法と呼ばれる施工法だ。その優位性はどこにあるのか。一般的な鉄筋コンクリート造と何が違うのか。PC工法のパイオニアである大成ユーレックの小林敬明代表取締役社長に聞いた。
工場で製造した部材を、現場で組み立てるPC工法。高品質な建物を短い工期で建てられる。耐震性も高く、阪神淡路大震災、東日本大震災でも実害はゼロだった。

耐震性や遮音性をはじめ多様な利点を持つ

小林敬明(こばやし・たかあき)
大成ユーレック株式会社
代表取締役社長

PC工法とは鉄筋コンクリート造の工業化工法で、建物の壁や床、屋根などの部材をあらかじめ工場で製造し、それを建設現場に運んで組み立てる工法のこと。現場で鉄筋を加工したり、型枠を組んでコンクリートを流し込んだりする作業がほとんどないのが特徴だ。

「そのため、天候の影響を受けにくく、少ない作業員で工事を進められるのがメリット。これが、躯体の品質の安定化や工期の短縮につながります。また規格化された部材を量産するため、コストを抑えることが可能。建設費用の圧縮にも大きく貢献します」

大成ユーレックの小林社長はこう説明する。同社は、1963年に大成建設のグループ会社「大成プレハブ」として創業。高度成長期の公共住宅の大量供給を支えながら、分譲マンション、賃貸マンションにも事業を拡大してきた。そして2001年には、さらなる発展を目指して現在の社名に変更。賃貸住宅市場で培った商品開発力やノウハウを生かし、土地活用の総合的なサポートを提供している。

「PC板と呼ばれる部材をジョイントして構築する建物は、耐震性に優れており、地震時の揺れも少ない。室内には柱や梁の出っ張りもないため、使い勝手がよく、本来的にマンションに向いています。当然、遮音性や耐火性、断熱性などの基本性能も優れている。そうした多様な優位性に磨きをかけ、集合住宅の“質の向上”という要請に応えてきたのが当社の歴史です。部材の品質向上や接合部の改良など、独自の技術開発も行い、商品群を充実させてきました」

法人による賃貸マンションの施工事例(PC工法)。11階建てで、1LDK、2LDKを中心に全43戸。1階に小規模保育所のスペースもある。

創業から50年以上、常に市場のニーズを的確にとらえてきた大成ユーレック。同社には、近年、個人だけでなく、法人からの土地活用の相談も増えているという。遊休地など自社の不動産を有効利用し、収益へとつなげていくCRE戦略に取り組む企業が増えるなか、高品質と低コストを両立するPC工法に関心が寄せられているのだ。

「1棟十数戸のものから数百戸のものまで、低層から10階建て以上の建物まで、幅広い物件に対応できることから、おかげさまでさまざまな依頼をいただいています。また法人のお客様ということでは、収益物件のほか、社宅や独身寮、学生寮などの相談も少なくありません。福利厚生施設の整備は、優秀な人材や学生の確保につながるため、再び充実させる傾向が見られます。当社としても、専用の商品を開発するなどして要望にお応えしています」