また、“元請けを行わない”ことも同社の事業スタイルの重要なポイントだろう。主要顧客であるゼネコンや設計事務所と競合することがなくなるため、企画段階から設計に参加し、建物に最適な基礎や構造を提案することが可能となるのだ。ゼネコン、設計事務所などで構成される同社のネットワーク「住金システム建築会」のメンバーは現在1380社ほど。この数字も発注側からの高い信頼を表すものといえよう。

さらに、同社は旧住友金属工業を母体としており、グループ会社の新日鐵住金から鋼材が安定的に供給されている。ロットの多寡にかかわらず、品質の良い材料を短期間で入手できることも、工期、コスト、品質面での大きな強みだ。また親会社の日鉄住金物産からは経営面で全面的なサポートを受けている。

部材の製造では自社工場を持たず、全国110社の協力会社に依頼するファブレス体制をとっているため、需要増にもスピーディかつ柔軟な対応が可能。製造・施工における高品質を維持するため、ISO 9001の認証取得、現場での入念な施工管理、本社の安全品質センターによる指導のほか、勉強会などを通して協力会社の技術力向上と意識の共有に努めている。

住金システム建築の商品による施工事例

平屋向けの規格タイプ、6階建ても可能な中低層向けタイプ、自由設計タイプといった幅広い商品を持つ住金システム建築。工場や倉庫はもちろん、オフィスビル、研究施設など、さまざまな建物をカバーする。

地域密着でスピーディに価値ある提案を行う

商品のバリエーションや品質を生かす営業体制の面でも強みが光っている。ゼネコンや設計事務所から特に高い評価を得ているのが、見積もりへの対応だ。同社は社内の自動見積システムにより、基本的に24時間以内に正確な費用と図面を提出している。一般に在来工法の見積もり作成は2週間近くかかるといわれ、提案も一種であることがほどんど。建築コスト削減などへの要請が厳しい現在、比較可能な複数の見積もりを図面つきで素早く提案できれば、受注への大きな推進力となることだろう。

営業拠点は、北海道から九州まで全国に17カ所。5月には21カ所に増える予定で、大型案件から小規模の依頼まで迅速に対応する。加えて、住金システム建築の営業担当者は、およそ6割が一級建築士か施工管理技士の資格保持者。建築技術の出身者を含めればおよそ9割を占め、初期から構造計画や施工面のサポートを行えるのが特徴だ。

ゼネコンや設計事務所の担当者に対し、専門知識を持ち、地域に密着したスタッフが対話をもとに価値ある提案を行い、アフターケアにも携わる。こうした安心感ある提案型・問題解決型の営業こそ、同社が目指すもの。担当者や現場からの意見は、より競争力ある商品の開発にも役立てている。

最近では、自治体がコスト削減のため、建築物の入札時にシステム建築での設計・施工を条件とするケースも出てきている。黎明期を終え、新段階に入ろうとするシステム建築。ただし、低コスト・短工期・高品質というメリットを生かすには、信頼できる製造パートナーを選ぶ必要がある。その候補として、豊富な商品と確かな品質・工程管理能力、強固なサプライチェーンを備えた住金システム建築は見逃せない一社といえそうだ。