付箋・赤線引きより自筆メモが脳に効く

築山氏が最後に「自分を変える」ためのちょっとした習慣としてあげるのが、「何でもメモ」である。頭が冴えない、と訴える外来の患者にすすめているのが、ラジオを視聴してアナウンサーのトークをメモ帳片手に聴くことなのだそうだ。聴き終わったら、そのメモをもとに内容を思い出して個条書きしてみる。ここが大事なポイントだ。

「まず耳からの情報を意識的に入力し、続いて自分でメモをとりながら要点をまとめて情報処理、さらにその内容を話して再現する出力というプロセスです。人に伝える、もしくは出力することを前提に人の話を聞いたり情報を得たりする習慣が身につくと、耳から脳に再入力されて記憶がより定着しやすく強固なものになります。新聞のコラムでも、会社のプレゼン資料でも、ただざっと目を通すのではなく、誰かに内容を報告するつもりで音読+自筆メモしながら読むと、その後の自分の話も具体性が増し、文章化することも容易になります。付箋をつけたり、赤線を引いたりするよりずっと効果的です。最近は、スマホで情報蓄積・管理する人も多いですが、それでは肝心の自分の脳みそには何も蓄積されません」

もし、重要な文書やフレーズがあったとすれば、その情報をできるだけ長く(数秒間)脳のなかに留めておき、文書・フレーズを頭のなかで暗唱したり、口ずさんでみたりする工夫も有効だという。すると、次回、その情報を脳から自由にいつでもとり出すことが可能になるというのである。

「実は私も、記憶力にそれほど自信がないので、“頭の整理ノート”を長年持ち歩いています。そのノートはもう数十冊にもなります。人と雑談していて、気になる話があったり、ふとアイデアがわいてきたりしたら、それを個条書きでさっと書き留めるのです。キーワードだけでもいい。日付とともに、それを書き、夕食時に家族にその話を少しすれば再入力も完了。あとで読み返したときに、そのときの思いがよみがえってきやすいのです」

何か「!」ときた事柄を紙に書き出す行為のさらなる効用は、問題を可視化できるということだという。言語化するということは、感情系ではなく思考系の脳の仕組みを総動員するということにより、あとで自己分析したり、考えを深めたりしやすくなるというのである。

習慣(1)朝は無意味・無内容な会話で脳が覚醒
習慣(2)ツラいときは笑え。脳はダマされる
習慣(3)「メモは第2の脳」ひたすら出力せよ

脳神経外科医 築山節
1950年生まれ。日本大学大学院医学研究科卒。現在、財団法人河野臨床医学研究所附属北品川クリニック所長。医学博士。著書『脳が冴える15の習慣』は50万部以上の大ヒット。最新刊に『頭が良くなる脳の時間割』がある。
(堀隆弘=撮影)
【関連記事】
“あったらいいな”をカタチに「質問、メモ、会議」の秘密
集中力を高めるベストな運動、睡眠、食事は?
お金がころがりこむ「朝型」人間の習慣10
発想力が60%アップする「歩き方」とは
一流営業は「先手必笑」笑顔5秒キープの挨拶をする