過熱する就活問題に最適解はあるか

この背景には、ガイドラインの見直しにより、5カ月の期間があったに昨年に比べ、今年は3月の広報活動解禁から6月の選考開始まで、企業、学生双方にとってわずか3カ月の期間しかない「短期決戦」に切り替わったことが大きな要因に働いている。とりわけ、学生の「売り手市場」が続く環境下にあっては、優秀な人材を確保したい企業側が浮き足立ち、経団連会員企業ですら“掟破り”の採用活動に踏み込まざるを得ないという現象を生んでいる。

経団連のガイドラインが会員企業の自主性を重んじ、罰則のない、いわゆる「紳士協定」となっている点も、会員企業に順守徹底を迫れない理由である。しかし、企業の採用活動が毎年、物議を醸すのは、「新卒一括採用」が絶対的な慣行として日本企業に定着しているという点に根本的な原因がある。

企業側には新卒者採用のコストを抑えられるなどの理由で、世界的に特異な日本型の採用活動からなかなか抜け出せない事情もある。これに対し、経団連とはライバルの経済同友会は、希望した仕事と採用した企業の業務のミスマッチなどから早期に退社した、いわゆる「第2新卒」らを含め、卒業後5年間の就職希望者を新卒扱いで採用し、企業に通年採用を促す提言をまとめ、解決策が一向に見出せない就活問題に一石を投じた。

しかし、新卒一括採用の日本型慣行を再考する問題提起となったとしても、これを打破するために費やされるエネルギーの大きさは計り知れない。その意味からいっても、過熱する一方の就活問題に最適解はないのが現実だ。

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