電気料金に上乗せされた1兆円超の賦課金

読者の方々は、ご家庭の電気料金に「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」が上乗せされていることをご存じだろうか? 太陽光や風力・地熱など再エネ産業の育成・発展のために徴収されているお金のことだ。

一度、ご家庭の電気料金をチェックしてみるといいかもしれない。自営業を営むわが4人家族を例に取ると、最近の再エネ賦課金は、7月772円、8月1369円、9月715円、10月726円であった。

実は、この賦課金が増額の一途だ。経済産業省によると、月300キロワット時の電気を消費する標準家庭の再エネ賦課金は、2014年度で月額225円、年額2700円(単価0.75円/キロワット時)だったが、15年度には月額474円、年額5688円(単価1.58円/キロワット時)と倍増。年間総額では14年度の6500億円が15年度には1兆3000億円と、初の1兆円台に乗る。

なぜ、こうした事態に陥ったのか。

2015年11月、COP21(第21回国連気候変動枠組条約締約国会議)がパリで開催され、20年以降の温室効果ガス排出削減の新たな国際枠組みが合意された。

日本は2015年7月、30年度の温室効果ガス削減目標(13年度比26%減)を国連に提出したが、この目標値は経済産業省「長期エネルギー需給見通し」の中で示された、30年度の日本のエネルギー需給構造(一次エネルギー供給における原子力、石炭・石油・天然ガス、再生可能エネルギーの量)を基にしている。

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表1 再生可能エネルギー等による発電量の推移/表2 再生可能エネルギー等(大規模水力除く)による設備容量の推移

この需給見通しでは、発電電力量に占める再エネ電気の割合を30年度で22~24%としている。しかし14年現在、国内の再エネ電気の割合は12.2%。水力を除けば3.2%だ。過去データを見ても、割合は低い(表1参照)。

この割合を上げるべく、12年7月に施行された再エネ電気の固定価格買取制度(FIT)は、再エネ投資を短期間で大幅に増加させる“強い原動力”だ。施行から3年で再エネ電源(除く大規模水力)の設備容量は9割増えた(表2参照)。

が、FITの効果は少々“強すぎ”たようだ。太陽光発電の設備の認定が激増した結果、前述の再エネ賦課金の負担が大きくなった。加えて、電力会社側の火力発電や水力発電を絞ってもなお発電量が電力需要量を超過し、電気の安定供給に支障をきたす恐れが生じた。そのため、電力会社が接続申し込みへの回答を保留せざるをえなくなる(理由は後述)という問題が顕在化したのである。

経産省は現在、30年度目標を見据えてFITの根拠である「再エネ買い取り法」の改正案を検討中だ。

課題は、再エネ導入のコスト負担をいかに抑えるかに尽きる。再エネを過度に導入することで、かえって再エネへの警戒感や不快感が醸成されることは望ましくない。経産省は法改正の方向性を徐々に示しつつあるが、確定するには至っていない。