スポンサーへのダメージは

それにしても、旧エンブレムの撤回では約1億円の関連経費が無駄になったといわれ、今回の新エンブレムの商標調査などには8000万円以上の経費がかかる見通しとなっているそうだ。この莫大な出費、労力、時間は何だったのだろう。

とくにダメージを受けたのは、エンブレムを独占的に宣伝活動に使う東京五輪・パラリンピックのスポンサーたちだったであろう。あるスポンサーは「もっと早く決めてほしかった」とぼやいた。

武藤事務総長は会見で「確かに(エンブレム使用に)ブランクが生じたということについては、国民のみなさま、それからスポンサーのみなさまに大変申し訳ないと思っております」と言った。 

会見終了後、しつこく、「スポンサーへのダメージ」について聞くと、こう答えた。

「もちろん、(スポンサーの)みなさん全員にご説明して、了解いただいております」

いろんな意味で五輪の歴史において異例のエンブレム選考となった。もっとも一番大事なことは、この新エンブレムが今後50年、100年と、人々に愛されていくものになるのかどうかである。

そのためにはまず、新エンブレムがいろんなところでたくさん使われていくこと、日本が東京五輪パラや新エンブレムを通し、世界に何を発信していくのかがポイントとなる。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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