男性管理職「女性部下は組織への忠誠心が低い」

【(3)男性管理職の意識:女性部下を敬遠してしまう】

アンケート調査結果によれば、「女性部下との仕事はやりづらい」と感じている男性管理職は全体の約6割、女性の登用に賛成している男性管理職でも実はこの傾向は変わりません。

その理由として、半数以上の男性管理職がパワハラやセクハラへの対応、コミュニケーションのしづらさなどが挙げられています。

筆者が行ったヒアリングでは、年齢の若い男性管理職を中心に、「男性、女性の差を感じたことはない」という意見も多く寄せられました。しかし、年配の男性管理職からは、次のような指摘がありました。

「女性は組織へのロイヤリティが低く(優秀な女性の場合は転職するなど)、立身出世を第一に考える男性部下と同等に考えることは困難です」

「共稼ぎの場合でも、男性が家計のラストリゾート(最後の手段)という常識が変わらない限り、職場のストレスなどで『女性のほうが簡単に辞める』という現象が存在し、『簡単に辞める人を部下にはしたくない』という意識が生じてしまいます」

仕事の能力上は、男女の差がないと頭では理解していても、勤続の可能性が低い女性部下を敬遠する男性管理職は少なくないと感じます。

「本物のイクボス」は、配偶者が正規職員の人だけ

▼ 家庭における経済的責任に対する使命感からの解放が“仮面イクボス”を減らす

今回のヒアリングを通して、意識のギャップが極めて小さかった(女性の積極登用に賛成し、なおかつ女性が働きやすい環境づくりの意識が高い)男性管理職に共通した特徴があることが分かりました。

それは、配偶者が正規職員として働いていることです。

アンケート調査では、男性管理職の約6割が、家庭における経済的責任を担うのは夫の役割であると回答しています。さらに、男性管理職(定年まで現在の企業に勤務予定)の約7割が、定年後も現在の企業にフルタイムで勤め続けることを希望していると回答し、仕事のやりがいよりも、雇用の安定や収入の高さを優先理由として挙げています。

これらのことからは、家庭を持つ男性管理職が抱える経済的責任は重く、会社優先、仕事優先にならざるを得ない状況が窺えます。

会社の女性部下からは理解が欠けていると突き上げられ、家庭にいる妻からは会社でたくさん稼いできてくれることを望まれる、いわば男性管理職も板ばさみの状態なのです。

仮に、経済的責任に対する使命感から解放されれば、男性管理職であっても、長時間労働に終止符を打ち、家庭への参画時間を増やす人も出てくるのではないでしょうか。

一見、関係性がないように見えますが、就業意欲の高い主婦に対して再就職、あるいは非正規から正規への登用機会を提供することが、男性の経済的責任に対する使命感を軽くし、“仮面イクボス”を減らすひとつの方法だと考えられます。

▼最後に

最後に、今回のヒアリングのなかで、年配の男性管理職が吐露した一言を紹介します。

「これまで何人もの女性部下が退職していった事実には、イクボスの難しさ、自らの不甲斐なさ、無力感、能力のなさを感じてしまう」

一方的に、「理解がない」と男性管理職を責めるのは簡単ですが、女性の活躍推進という世の中の急激な変化に、悩みを持つ男性管理職への配慮も忘れてはいけません。

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