東大生の親は、富と文化の「わが子に再生産」する

たとえば、学校で教えられる(抽象的な)教科内容に親しみやすいのは、どういう家庭の子どもか。おそらく、家にたくさん本があり、幼い頃からそれに慣れ親しんできた子どもでしょう。

家庭の文化的環境の影響は、芸術系の教科ではハッキリ出ると思われます。

小学校の図画工作科の内容に、「我が国や諸外国の親しみのある美術作品、暮らしの中の作品などを鑑賞して、よさや美しさを感じ取ること」(学習指導要領)とありますが、美術作品の「よさや美しさを感じ取ること」など、育ちの悪い私にはなかなかできそうにありません(事実、そうでした)。

親が芸術好きで、美術館に連れて行ってもらう頻度が高い子どもが有利でしょう。文化資本が多い(上流)家庭の子どもは、学校での教授内容に親しみやすく、高いアチーブメントを収め、やがては高い社会的地位につく。

こうした文化資本を媒介にした、親から子への地位の再生産過程を、ピエール・ブルデュー(フランスの社会学者)は「文化的再生産」と呼んだのでした。

これは、階級社会のヨーロッパで明らかにされた現象ですが、日本でそれがないとは限りません。図3にみるように、小学生の文化的行動の多寡は、家庭の年収ときれいに相関しています。

2013年度の『全国学力・学習状況調査』の特別集計で、年収が高い家庭の児童・生徒ほど、教科の正答率が高い傾向が明らかになりました。家庭の経済力のみならず、文化資本の影響も被っている可能性が大です。

東大生の家庭の年収分布から話が広がってしまいましたが、

(1)現代日本でも、親から子への富の「密輸」があること
(2)教育格差の是正にあたっては、経済面での支援(通塾費の補助……)だけでは十分でないこと

の2点を強調したいと思います。

後者は、学校の特別活動をもっと充実させ、すべての子どもに幅広い体験を提供すべし、という提言につながります。人物重視の方向に大学入試を改革する動きが出ていますが、そうなると、家庭による文化格差・体験格差の影響が色濃くなるでしょう(面接での立ち振る舞いや話題の豊富さなどが評価されるわけですから)。

入試改革と連動して、カリキュラムの変革もされねばならないことは、指摘するまでもありません。

(図版=舞田敏彦)
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