イギリス経済が壊滅的な打撃を受けるEU脱退

ここで、これまでのところパナマ文書との関係で名前が出てきた政治指導者たちの名前をもう一度、見てみよう。プーチンと習近平、あるいはシリアのアサドなどは、確かに恥をかいたであろうが、しかし彼らがこれで失脚する可能性は極めて低い。それぞれの国の民衆は(シリアの場合、ニュースがそもそも国内に入っていない可能性もあるのだが)、幻滅はするだろうが、それで暴動を起こすということはないだろう。選挙による政権交代というのも、民主制をとるロシアでさえも考えにくいことだ。

ところが、これがイギリスとなると、事情がまるで異なって来る。実はキャメロン首相は、税金逃れを厳しく批判してきた。世界金融危機以後、イギリスも財政難で苦しんでいるわけで、税金逃れを少しでも減らすことは国家的課題なのだ。それがパナマ文書騒ぎのおかげで、キャメロン氏が首相に就任する前に証券仲買業の亡父がタックス・ヘイブンに設立したファンドに投資していたことがばれてしまったのである。

2008年の世界金融危機以後、恒常的な引き締め政策に喘いできたイギリス国民は、当然ながら激怒した。この6月に予定されているイギリスのEU脱退・残留を決める国民投票においても、キャメロン政権が主張する残留も(それがキャメロン首相の望む結果であるということだけで)大幅に不利になるものと思われる。そして万一イギリスの有権者がEU脱退を決めれば、世界経済が大混乱に陥ることはもちろんだが、イギリス経済は壊滅的な打撃を蒙るであろう。

いったい誰が何の意図でパナマ文書をリークしたのか、その真相はわからずじまいになる可能性が高い。だがリーク情報が持ち込まれた先は、アメリカの非営利団体のICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)とドイツの新聞である。ここでも、アメリカとドイツという組み合わせが顔を出す。米英関係が急速に疎遠になる中で、CIAとつながりのある「ナチス系」の法律事務所が震源地となった国際的スキャンダルの最大の被害者が、イギリスの首相であるという図式を面白いと感じるのは、筆者だけではないはずだ。