国内のマーケットは広げられる

一方、需要が頭打ちだといわれる国内について三菱電機はどう取り組んでいるのだろうか。

三菱電機の静岡製作所は、全国に出荷する家庭用ルームエアコンをすべて生産しており、3500人の従業員が働く、社内でも有数の規模を誇る製作所だ。

海外に生産拠点を移す企業が多い中、なぜ国内にこだわるのか。静岡製作所所長の松本匡氏(現リビング・デジタルメディア事業本部副事業本部長)は次のように説明する。

「エアコンは季節もので日本が暑いのは、6~8月。そのため生産が集中するのは4~7月までです。生産台数で見れば年間の7割ぐらいがその季節に集中します。繁閑の差は激しく、シーズン中の減産、増産の判断も日々の気候に大きく左右されます。いったん減産しても、気候が変わればすぐに増産しなければならない。中国やタイで作っていてはタイムラグが生じ、売り時を逃してしまうのです」

国内にこだわる理由は、むろんそれだけではない。

「我々は協力会社さんと一緒に育ってきました。もし海外に1回出ていってしまうと、60年間ずっと一緒に技能や技術を培ってきた人たちとの関係が切れてしまう。それは同時にサプライチェーンが切れることも意味します。我々は決して自分たちだけでモノを作っているわけではないのです」

この静岡製作所では、今年目玉となる新製品のエアコンが発売された。それが室内機構造を一新した「霧ヶ峰アドバンスFZシリーズ」。プロペラファン2つを使った革新的なもので、2つのファンを独立して制御することで、同時に2つの温度帯をつくることができる。

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(上)内部構造を50年ぶりに一新した霧ヶ峰FZ シリーズ。1人の人間が最後まで手作業で組み立てる。(左下)リビング・デジタルメディア事業本部副事業本部長 松本 匡氏(右下)静岡製作所 ルームエアコン製造部 技術第一課長 吉川浩司氏

この製品の難易度は高く、開発にかけた歳月は7年。それだけに満を持しての登場となった。ルームエアコン製造部技術第一課長の吉川浩司氏は、こう語る。

「今多くの家電品がどんどん成熟し、コモディティ化が進んで差別化できなくなってきている。どんぐりの背比べ競争になっているような状況です。だからこそ、省エネのあり方、快適性のあり方を見直し、マーケットを広げていくことが必要なのです」

そのキーになるのはモーターやコンプレッサー、それらを制御するインバーターだ。そこから空力技術や冷媒回路技術で製品化していく。このように開発の面でも、様々な顔を持つ“総合電機”メーカーであることが大きな強みになっている。