インバウンド対策は先進例・ハワイに学べ

伝統・習慣が異なる人たちと向き合うストレス

第3に、HTAはプロモーションだけではなく、観光関連の人材開発、自然や伝統文化の保全、治安向上、そしてコンベンション・センターの運営などにもかかわっている。これらは、ディスティネーションの価値を高めるうえで重要だが、個々のホテルや観光施設や旅行会社が単独で取り組むには難しい活動である。

例えば、コンベンション・センターは、それ自体で収益を上げることは構造的に難しい事業なのだが、そこで大規模イベントが開催され、人が呼び込まれることで地域のホテルの収益性が改善する。この収益の一部をホテル税として徴収して、コンベンション・センターに還流させれば、事業性に乏しいコンベンション・センターが息を吹き返す。

ハワイではこうした相互補完関係を大切にしており、この関係の中でコンベンション・センターを運営する。そのため一方で、ホテルの宴会場でも可能な300名以下のイベントなどは、ハワイのコンベンション・センターは引き受けないのだという。そのほかにも、HTAが手がける観光関連の人材開発、自然や文化の保全、治安向上、そしてプロモーションといった活動は、民間事業者との相互補完関係を築くことが期待できる（図3参照）。

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図3 DMにおける相互補完関係の例

第4に、HTAは観光ビジネスの活性化を図るのみならず、地域コミュニティとの良好な関係づくりを重視している。HTAの主要な活動には、自然や伝統文化の保全、治安向上への協力なども含まれている。さらにハワイへの旅行者の定期的な満足度調査だけでなく、住民の意向調査も行うなど、ハワイの観光産業が現地に住む人たちと共存できているか否かの把握を欠かさない。

多くの外国人旅行者の来訪は、地域住民としては嬉しい半面、ストレスもかかる。伝統や習慣が大きく異なる人たちと、日々向き合うことになるのだ。そのための備えにも、ハワイは怠りなく取り組んでいる。