英語は1人ひとりの生活の幅を広げる

【三宅】大学入試における4技能の測定にTOEICテストを採用するケースが増えてきています。その理由をどう考えますか。

【山下】採用については、各大学でもいろいろ議論されていると聞いています。大学で英語を勉強し、卒業していくことを前提とすれば、どうしても、すぐにビジネスの現場で使える英語ということになるでしょう。そんな素質、能力を測定するにはTOEICテストは絶対に適しているからだと自負しています。ある大学の付属高校の話なんですが、いずれ大学に進もうとするときに、大学ではTOEICテストが使われているので、高校生から慣れておくという意味で、英語学習初級者から中級者向けの「TOEIC Bridgeテスト」を受けるというケースが結構あります。

【三宅】実は、東京大学の推薦入学でも、私どもの受講生が合格しています。TOEICスコアで800点以上取って。もちろん他の教科もよかったんだと思いますが。あるいは、別の高校生の受講生ですが、10カ月ぐらいでTOEICスコアを400点伸ばして800点を突破、上智大学への推薦入学が決まりました。そうなると、高校生でも、TOEICテストを受験する人は増えますね。

【山下】受験料もリーズナブルですし、年10回、チャンスがあります(笑)。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】話題は変わりますが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや、日本への外国人旅行者の増加などで、日本人英語学習者にとっては、勉強のチャンスが増えるというプラスの環境にあると思います。そこで、これを生かして日本人は何のために英語を学ぶか、どのように英語と関わっていくのがいいのか、山下さんのご意見を聞かせてください。

【山下】現在は、世界が英語を1つのツールとしてワンワールドにつながっている。アメリカが市場主義の中心だったことからそうなったわけです。そうした中、日本の文化や自然が魅力的だと知られるようになり、このところ、いろんな国からの観光客を数多く見受けますね。

だからこそ、英語でコミュニケーションできるようになれば、私たち1人ひとりの生活の幅が広がってくるのではないでしょうか。そうなれば1人ひとりの生活が豊かになる。そういうきっかけになると期待しているところです。

そのときに「さあ、英語を勉強するぞ!」と構えすぎてはいけません。もちろん、英語をそれなりに使いこなそうとすれば、トレーニングはしなければいけません。でも、それはイーオンさんで学ぶもよし、自宅で声を出すもよし。いろいろな工夫をして、苦労して、話せるようになる。そうすることは脳にも刺激を与えますから、脳力アップにもなるでしょう(笑)。

【三宅】それはぜひやらないといけない。

【山下】あるいは思考形態というのも、日本語だけで物事を考えているよりも、英語でも考えるというのは楽しいことだと思います。そうすれば、思考の範囲も広がり、行動に移せれば、人に対しても多様な接点を持つことにつながっていきます。これは、日本という国にとっても、すばらしいことだと思いますね。

【三宅】本日はありがとうございました。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
【関連記事】
なぜ日本の教育だけではグローバルで活躍できないのか
大学の入試改革をすれば、英語教育は絶対変わる
2019年「センター入試」はどのように変わるのか
英語ができる人1000人に聞いた、子供にマスターさせる近道
なぜ「グローバル人材」は地頭のよさが必要なのか