ところが、“絆”は保つことができる半面、ずるずると付き合ったばかりに本来自分がしたかったことができずに損した気分になる……という構図だ。

では、そうした“泥沼”に陥ったら、時間泥棒からの脱出は難しいのか。

「まず、自分自身を見つめて、人に嫌われたくないといった時間の浪費の根本原因が何かを探るのです。そして、自分にはそうした心の仕組み(欲求)があることをしっかり認識する。そのうえで、例えば飲み会に毎回付き合わないと本当に嫌われてしまうのか考えてみる。すると、幻想の不安に振り回されていたことに気付くこともあります。さらに、飲み会以外の方法で人とのつながりを維持・強化することができないか思案してみるのです。すると今度は、案外、お酒ではなくランチなどをともにすれば事足りることに気付く場合があります。人によっては、自分の時間の大切さを再確認することで、多少、人に嫌われてもしかたないと腹をくくって、酒やゴルフなどの誘いをきっぱりと断れるようになるケースもあります。よくないのは、自分の深層心理をよく確認しないまま、時間浪費となっていることをただストップすること。いずれ再発したり、別の浪費に変わったりするだけなのです」(古川氏)

会議や打ち合わせも、◯分間と事前にかける時間を決めないまま始めると、つい相手のペースのまま長引くことがある。自分だけの都合でコントロールできない部分もあるが、相手のペースに寄り添いすぎてしまうことが多いのも、「一種の嫌われたくない心理」(同)だという。対策としては、上司との個別打ち合わせの場合、「この後、別件がございまして。お話のポイントはこういうことですか」などと話を一度整理すること。また相手が部下の場合は、打ち合わせしたい要点を事前に提出してもらえば短時間で済むという。

「ふだんから周囲に『あの人は忙しい人だ』というイメージを植え付けることで、付き合い酒の欠席などで多少の不義理をしても嫌われずに済み、結果的に時間節約にもなります」(同)