「ゆるい感じが絶妙」「こんな女性と結婚したい」

花の「んっ、んっ、 ウンマ~~ッ」と無邪気な表情で言いながら、もりもり食べる食べっぷりのよさも読者に好評だ。特に、男性読者に。

「女性のひとり暮らしを覗き見している感じ。とにかく花が可愛いんです。世の中、カリカリしている女性が多い中で、こんなおっとりしたキャラは癒やしになります。ゆるい感じが絶妙。こういう女性なら彼女や奥さんにしたいですね」(29歳・独身男性・IT)

「ウチの奥さんは専業主婦ですが、子供のお弁当も、夕食のおかずも、冷凍食品が中心。花も、使う食材は、冷蔵庫の残りものですが、ひと手間かけている。アイデアとおいしく食べてやるという執念みたいなものを感じる。食材は一流ではなくても知恵を使う母親的なスキルに尊敬してしまいます」(35歳・男性・商社)

作品中でひとりごとをつぶやいているシーンが多いのも、花に親しみを感じる要因だという男性読者は多い。それもオヤジギャグやダジャレ。そうしたスキの多い印象が男性にはたまらない。完全に鬼嫁の尻に敷かれている40、50代の昭和のおじさん読者には、理想の嫁像として圧倒的に支持されているようなのだ。

さらに料理通の心をもとらえる。「料理あるある」が散りばめられているからだ。花はあるとき、こんな台詞をつぶやく。

「何回やっても、1人分のパスタの麺の量がキマラナイ女。多いかと思うと少ないし、少し多めに茹でると残る。でも、いちいち重さなんて量ってられないし」

わかる、わかる。ページをめくるほどにそんな共感が広がるのだ。

「グルメは昔からある漫画の普遍的なテーマですが、現在、グルメ漫画は細分化されています。そこで『孤独のグルメ』の女性版を作れないかと久住昌之さんに打診したのが連載の始まりです」(編集長・石井氏)

話題のレシピからストーリー、セリフまですべて久住氏が原作。そこに漫画化の水沢氏ほどよくがアドリブを入れ、花のキャラクターが生き生きと描かれている。

レシピの斬新さと素材の身近さ、そして実際に作ってみるとおいしい。さらにキャラクターの可愛さも加わって大ヒットにつながった、と石井氏は語る。

女性からは「あるある、そうそう」、さらに「ズボラだっていいじゃない!」と共感を得る一方、男性からも、そんなに美人じゃないけど、可愛くてちょっと抜けたところがある花に好感を抱く。

単行本の表紙カバー裏には、主人公・花の無防備な様子の絵が描かれている。男性読者へのサービス?

Tシャツに下着だけというズボラな姿は、肌の露出度も多く、ちょっぴりセクシー。恍惚の表情で食べる花もエロ可愛い。夫が単身赴任中でも家事を完璧にこなして、いつも身奇麗にしているより、洗濯物がたまっていたり、散らかったりしている部屋でズボラ飯を食べている妻のほうが可愛げがあって、安心できる。そんな男性読者の声が多い。

誰しもが思い当たる日常のズボラな経験。そんなちょっと人に知られたくないズボラな部分を共有できる花は、現代ニッポンにおける皆の理想の友達であり、恋人であり、奥さんなのだろう。

■『花のズボラ飯』第1巻試し読み
http://arc.akitashoten.co.jp/comics/elegancecomic/1
■『花のズボラ飯』第2巻試し読み
http://arc.akitashoten.co.jp/comics/elegancecomic/2

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