36人のフラガールを率いるリーダーのモアナ梨江は「再雇用制度によって、ダンサーたちが結婚後の生活まで見通せるようになり、生き方の選択肢が広がりました」と語る。

スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチームリーダー モアナ梨江氏

井上は、いわき市にいるときはほぼ欠かさずショーを観ることにしている。気になることがあれば、直接、指導者やリーダーに伝えている。

資金が限られるなか、井上は既存の資産であるショーやコンテンツの魅力を格段に上げることで、新たな収益源に育てようとしているのだ。

組織を変えるために第2の勢力をつくる

売り物を増やす一方で、井上は硬い岩盤のような社内組織を改革するための仕組みづくりにも乗り出す。社長就任後すぐに業務改革室を設置。その室長には、東日本大震災の緊急時に統轄支配人として顧客の保護と避難の総指揮をとった下山田敏博(55歳)を据えた。同時に総務部のなかに組み込まれていた人事課を独立させ、人事部を新設。その部長も下山田が兼任。人事と社内改革は切り離せないことがわかっていた。

「ある日社長に呼ばれて、『生き残っていくために会社を変えようよ』と言われました。私も人事の仕事をするなかで、社内に無駄な働き方があることは感じていましたので、少ない人数で成果を出せる方法をつくっていこうと思ったのです」(下山田)

炭鉱時代からの歴史と伝統は残せばいい。だが、時代の変化で変えなくてはいけない部分もある。

もう一つ、井上が着手したのが、「第2の勢力」をつくることだ。就任当時、常磐興産に女性の管理職はゼロ。完全なる男社会だ。しかし女性がマーケットのカギを握っている今、女性の感性や声が反映されない組織であってはいけないと考えた。そこで井上は14年4月、半ば強引に10人の管理職を誕生させる。