住宅展示場に足を運び実際に家を見ること

よく話し合い、建てたい家のかたちが固まるまでに、半年や1年はすぐに過ぎる。その検討の段階で大事なこととして、住宅を実際に見ることを山下さんは推奨する。

「週末には家族揃って展示場に住宅を見に行くべきですね。仕事が忙しくて、今は家に眠りに帰るだけのご主人も、いずれ年をとると家で過ごす時間が長くなる。だからこそ、家づくりのための話し合いだけでなく、実際に家を見ることを大事にしたほうがいい。そうしてはじめて、30年、50年という長い年月を、満足して住める家が建てられるのだと思いますよ」

家族の希望を突き合わせ、集約したら、実際の家づくりに入る。そのとき気をつけたいのは住宅の基本性能だという。

「2009年に法律も施行された長期優良住宅。これに適合する住宅を建てていただきたいですね。住宅の建て替え時の経過年数を調べると、イギリス77年、アメリカ55年に対して、日本は30年。建築後20年を経過すると建物の価値がなくなってしまうのも、日本だけです。今後は、50年、100年住める家を建て、子や孫の時代には彼らの生活スタイルや志向に合わせたリフォームを施すことで、結果的に住居のコストを軽減していくことが大事でしょう」

長期優良住宅には、広さや省エネ、維持管理の容易さなど、いくつかの条件がある。もっとも重視したいポイントを、山下さんはこう解説する。

「大事なのは、100年継続して住むことができるだけの、基本的な構造躯体の建物であること。もちろん、耐震性も重要で、耐震等級3を取得してほしい。大手住宅メーカーで建てると、この等級を取得することは難しくないですし、実際に建てた人の7、8割の家が等級3を取得しています。また、壁材に、燃えにくい素材を使うことなども重要になります。火災で内部は焼けてしまっても、外壁が燃えない家では、住民は必要なものを持ち出して逃げることができるし、隣家への延焼も防げる。地震に起因する大規模な火災が起きたときなども安心ですね」

省エネにも気を配りこだわりの家づくりへ

さらに気をつけたいのが省エネ性能。気密性の高い住宅に注目したいという。
「気密性の高い住宅にすると、空調コストを下げると同時に、家の中の温度を全館で同じにすることができるので、お風呂場でのヒートショックなども防げて、健康にもやさしい。また、陸屋根と呼ばれる平面の屋根の場合、ソーラーパネルもたくさん設置でき、年間30万円程度かかっていた空調費がゼロになり、逆に、電気を売って利益を出すことも可能です」

最後に、住宅展示場では何を見るべきかを伺った。

「大手、中堅など、さまざまな会社の住宅展示を合わせて見るべきです。それぞれに得意な工法があり、価格も異なります。素人目には理解しにくい工法の違いなどについては、現場の担当者にどんどん質問しましょう」

本当に住みたい“こだわりの家”を建てる。そのためには、実現までのプロセスを一歩ずつ進むのがコツのようである。

(取材・文=大竹 聡 撮影=高木昭仁)