大学、官庁、図書館で、意外に読まれる

会社の応接室や役員室の棚でよく見かける、分厚い会社史。見るたびに、「誰も読まないだろうな」と思われる方も多いだろう。口が悪い人は、「枕にしかならない」と言った。さらに口の悪い人は、「硬すぎて枕にもならない」と言ったらしい。

ところがである。現実には、会社史は、意外に読まれている。大学や官庁、あるいは地方自治体の図書館でも、会社史は、閲覧頻度、貸し出し頻度の高いジャンルの一角を占める。たしかに、分厚い会社史を全部読み通す人は少ないだろう。しかし、会社史を「部分読み」する人は多い。会社史は、その会社やその会社が属する業界の百科事典的な意味合いをもっており、当該企業の従業員だけでなく、顧客、投資家、地元住民、行政関係者、就職希望者、ライバル企業関係者等々にとっても、貴重な情報源となっているからである。

1978年にスタートした「優秀会社史賞」(日本経営史研究所主催)は、隔年ごとに表彰作品を選定しているが、別表は、最近の第16回・第17回「優秀会社史賞」の受賞作品一覧である。これらは良い会社史の代表的事例であるが、良い会社史は発行企業の競争力を高める効果をもつ。それは会社史が、いくつかの重要な役割をはたすからである。

良い会社史とは何か。発行する企業から見れば、期待された役割をはたす会社史が良い会社史である。企業が会社史に期待する役割とは何か。その役割は大きく3つに分けることができる。外へ向けての広報面での役割、内へ向けての教育面での役割、および未来へ向けての学習面での役割である。