それにDさん自身は気前のいい上司を演出しているつもりでも、誘われた部下は喜んで飲んでいたわけではなかった。いつもおごられっ放しというわけにもいかないから、時に割り勘で支払うこともある。早く帰って自分のスキルアップの勉強がしたいのに深夜まで付き合わされる。終電後に帰宅する場合のタクシー代は自腹……。部下たちはムダな出費を強いられて不満に思っているだけでなく、上司の収入が大幅に減少していることを知っているから、無理をしておごり、見栄を張る姿を滑稽だと感じていた。これではおごったお金が生き金にならない。

もしDさんがいい上司でいたいのなら今の時代に合ったおごり方を考えるべきだ。例えば部下の小腹がすいた時間を見計らってドーナツを差し入れたり、暑い時期なら冷えたドリンクを冷蔵庫に用意してあげるほうが、費用対効果は抜群に高い。

家計の再建は13万円確保している小遣いを半減させることから始めよう。これだけで7万円浮く。

車は買い替え時期がきたら、現在の高級セダンをダウングレードして、自動車ローンを2万5000円程度軽減する。Dさんの車選びの基準は「ゴルフ場に乗り付けて恥ずかしくない車」だが、それならハイブリッド車のようなエコカーのほうが時流に合っているし、燃費もよく税金も安い。また、子どもが親と喜んで出かけるのは小学生のうちだけという場合も多い。今のうちにドライブや旅行をしてたくさん思い出をつくるなら、室内が広いミニバンにしてもいいだろう。

小遣いと自動車ローンの削減で浮いた9万5000円のうち6万円で毎月の赤字を解消し、3万5000円を貯蓄に回すと年間42万円も貯まる。毎月の赤字解消のおかげでボーナスも有効利用できるようになる。赤字補填分は家族との旅行費用や冠婚葬祭のような突然の出費に備えた貯蓄に充てる。

現在の貯蓄額は100万円と年収のわりに低すぎるが、子どもが私立中学受験する2年後には300万円近くに増えているはずなので学費の心配も少なくなる。

Dさんにとってはいきなり小遣いが半減することはかなりの痛手だろうが、家計を見直すことでいい上司でいられて、家族の絆が深まり、しかも貯蓄もできるようになるのだから、チャレンジする価値はある。