症状を見分けるのは、親の役目

誰しもがなりうるメンタル不調。しかし、難しいのは症状が見えにくい点にある。子供は“ストレス”や“不安”といった言葉自体を知らないため、病気の自覚もなければ、症状の説明もできない。だからこそ親がどういった部分に症状が出るのかをあらかじめ知っておく必要がある。

一番最初に出るのが睡眠障害。寝つきが悪い、夜中に目が覚める、いつもより1時間以上早く起きてしまう(寝不足だが二度寝ができない)という症状が続く場合は危険信号。

「朝、起こしに行ったが、なかなか起きられない、日中眠そうにしているといったことがあったら、少し気を付けてください」(諸富氏)

寝不足が続くと、食欲不振や物に当たる、言葉遣いが悪くなるなど、イライラが原因の言動が増える。また、勉強面での影響も出始める。

「集中力が低下するので、ケアレスミスも増えますし、学校や塾での忘れ物が多くなります」

次に出るのが、身体症状だ。実は前出の高橋氏は元小児科医。メンタル不調が原因と思われる体調不良を多く診てきたという。

「メンタル不調の子供には、頭痛、腹痛、下痢などの症状が出ます。一見風邪と変わりません。しかし、内科や小児科でも原因がわからないと診断された場合は、心の不調が引き金となっていることが多いのです。学校に行く時間になると体調が悪くなり、休むとケロッとしているなんてことはありませんか? これは仮病ではないのです。こういった症状が何度か起きたら、児童精神科や心療内科の受診をお勧めします」(高橋氏)

薬を飲まなくても治す方法があります

心療内科や精神科と聞くと、心理的に抵抗のある方も多いことだろう。

「今は薬をまったく使わないクリニックもありますし、悩みを話すだけで気持ちが楽になる場合も非常に多いです」(高橋氏)

相談内容によっては、カウンセラーが状況を整理し、学校を休ませる、転校させるなど、環境を変える提案をすることもできる。

「学校に行きたくない、と心のどこかで思っていても、親子で“学校に行かなきゃ”と思い詰めていることが多いものです。そうした心理状態や環境から少し距離を置く提案をするのもカウンセラーの仕事です」(高橋氏)