従来は考えられなかった施策だ。なぜなら、日産もサプライヤーも、生産面の“秘密”をさらけ出してしまっているのだから。R&D(研究開発)ではないが、会社の枠を超えてイノベーションを起こす「オープン・イノベーション」に近い取り組みである。

日産と資本関係のない、ライバルメーカー系のサプライヤーも含まれる。

こうした新しい取り組みを始める場合、たいていは自動車メーカーとサプライヤーの間で細かな交渉がつきまとう。工場の使用料、稼働する場所と面積、設備の移設費用の負担、原価低減した分の配分……。流れてしまった食品大手の経営統合のように、統合比率をどう精査するかといった互いの利害が表面化してしまうのが一般的だろう。

ところが日産栃木工場には、これがない。

「すべてが、フィフティ・フィフティ。細かな計算よりも、まずはスピード優先なのです。あなたが2割で私が8割、エッ、もっと欲しい、などとやり合っていたら、日本のものづくりはブレークスルーができない。仮に3人で手を握って100円安くなったなら、後で取り分を考える。基本はイーブンという思想なのです」と高岡。

この取り組みはTier1だけではなく、Tier2、Tier3にも波及する。

例えば、燃料噴射装置の吸入空気量を計測するエアフロメーター。従来は、茨城県のTier1メーカーが組み立てて静岡県に運び、静岡県の会社がエアクリーナーを取り付けて栃木工場に搬入していた。大型部品でありながら、英語の「V」の字を描くような搬送・供給だった。

これを、エアクリーナーを栃木に送ってもらい、エアフロメーターを栃木工場内で組み立てる形に切り替えた。運送費はもちろん、管理費も削減でき、さらに中間在庫も低減され、試算では1台当たり約125円ほど原価低減できる見通しである。