若い有為な人を育てるのが主たる任務

【塩田】衆議院議員の定数の不均衡、いわゆる「1票の格差」について、昨年11月に最高裁判所が2014年12月の総選挙に関して「違憲状態」という判決を出しました。現状を放置したまま解散・総選挙を行うと、次は最高裁が「違憲判決」を下す可能性もあります。今夏の衆参同日選などを視野に入れているといわれる安倍首相は、解散・総選挙実施の制約となりかねないため、「1票の格差」是正に積極姿勢を示し始めたと見られています。

【谷垣】この問題は衆議院議長の諮問機関が出した答申を基本的に尊重するのが基本線だと思います。11月の最高裁判決については自民党の中に不満もたくさんあり、地方選出の議員がどんどん減らされていくのは、「地方創生」と言っていることと矛盾するのでは、という議論もあります。それもわからないわけではないけど、三権分立の下で、最高裁から憲法違反と言われるようなことは、立法府としてはやはり直していかなければいけない。

実施された選挙は無効にしないと言われていますので、今までのところはあまり混乱は見えないけど、仮に最高裁が、我慢の緒が切れたと言って選挙無効判決でも出せば、混乱は相当なものになる。そこまで待っているのは立法府としてはまずいと思います。

【塩田】答申は、小選挙区の定数配分で、各都道府県に1人ずつ割り振る現行の「1人別枠方式」を廃止して、人口比で定数配分を見直す「アダムズ方式」を盛り込みました。

【谷垣】いろいろな方式が議論になっていますが、基になる国勢調査について、2015年実施の簡易国勢調査では各県の間の定数配分の見直しはしないと答申に書いてあります。2月26日に出たのはその数字ですから、その範囲で「1票の重さ」を1対2の範囲内に収める。2020年の大規模国勢調査が出たときには、今度はやはり各県の間の定数配分の見直しもしなければいけなくなるでしょう。流れからすれば、確実にそうなります。20年の国勢調査の結果が出れば、確実にやりますということで各党協議をやっていく必要があると思います。

【塩田】1年前のインタビューで、「首相を目指す考えは」とお尋ねしたとき、「これは結局、望んでなるものでも、なれるものでもないと思っています。歳も70です。まあまあこんなとこかなって感じですね」という答えでした。政治家として現在、これからの目標をどうお考えですか。

【谷垣】麻生太郎さん(副総理兼財務相。元首相)ともよく話すんですけど、「やはり若手を育てなければ」と。そろそろわれわれがやらなければならないことだと思います。

【塩田】「政界、一寸先は闇」と言われます。いつ何が起こるかわかりません。いざというときは安倍首相の後を継いでもという気持ちはありませんか。

【谷垣】本当にとんでもない事態が起こって、何かやらなければというときには、私もいろいろなポジションを経験させていただいたので、お国のためというか、力の出し惜しみをするのはいけないと思いますけど、全体としては若い有為な人を育てるのが主たる任務かなと思っています。

谷垣禎一(たにがき・さだかず)
自民党幹事長・前自民党総裁
1945年3月7日生まれ(現在、71歳)。父は谷垣専一元文相。東京の麻布中、麻布高を経て、東京大学法学部に進学。79年に司法試験合格。82年に弁護士登録。翌83年、父親の死去に伴う衆議院旧京都2区補欠選挙で当選し、衆議院議員に(以後、旧京都2区と現5区で連続当選12回)。橋本龍太郎内閣で科学技術庁長官、小渕恵三内閣で国務相兼金融再生委員長、小泉純一郎内閣で国家公安委員長、財務相、福田康夫内閣で国土交通相を歴任。福田政権では自民党政調会長も務めた。一方、2005~08年に自民党で谷垣派を率い、09年に野党転落後の自民党で総裁に就任した。自民党の政権復帰後、安倍内閣で法相を務めた後、14年に自民党幹事長に。「自民党リベラル派の代表格」といわれるが、改憲容認を明言する。政界屈指の自転車愛好家で、ロードレースに参加して完走したことも。
(尾崎三朗=撮影)
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