新規参入やIT化で供給過多、デフレに

──江戸時代の花魁は地位が高かったが、遊女の大半は悲惨な境遇にあった。いまや風俗嬢は特別な事情のある人が身を落としてなる職業ではない。
社会的地位が高かった上級遊女・花魁 花魁は幼少から高度な教養・芸事を仕込まれ、社会的地位は高かった。江戸時代の吉原は幕府公認の遊郭であり、その職業ゆえに、遊女が蔑まれることはなかったとされる。

09年以降はリーマン・ショックの影響で、大学生や専門学校生が学費や生活費を稼ぐアルバイトとして、風俗産業で働くことが珍しくなくなりました。性交経験の少ない(あるいはない)女性の応募、高学歴化、高齢化も進んでいます。

供給過多はこの業界にもデフレ化をもたらし、風俗嬢の平均月収は2000年の平均70万円から、今は平均36万円まで落ち込んでいます。稼げる人とそうでない人の二極化が激しく、容姿に恵まれ営業力やコミュニケーション能力が高い一握りの女性しか、高収入を得られないのが実情です。

収入面で最下層にいる女性は個人売春に流れたり、売春を斡旋する犯罪組織に取り込まれることもあります。最近の動向としては、介護業界との兼業が多いことが挙げられます。

また日本では実入りが悪いので、売春が合法のオーストラリアやアメリカへ、英語の勉強も兼ねて稼ぎにいくという動きも見られます。

東京オリンピック開催に際し、公の場から風俗業を駆逐する政策が取られることは必至です。現在の風俗産業は外国人観光客を積極的に受け入れていません。しかし、新たな規制が設けられれば、そこから逃れる形で外国人向けの新業態が生まれる可能性も、十分にありえます。20年は、風俗開国元年になるかもしれません。

中村淳彦(なかむら・あつひこ)
1972年生まれ。ノンフィクションライター。主著に『名前のない女たち』『ワタミ渡邉美樹 日本を崩壊させるブラックモンスター』など。新潮新書『日本の風俗嬢』は1位書店が続出してベストセラーに。