エネルギー自給率「約6%」という現実

2013年において、日本は原油の約83%、LNGの約30%を中東からの輸入に依存しており、中東の地政学リスクを無視できないというのが一般的な見方だろう。過激派組織ISによるテロやサウジアラビアとイランの国交断絶、シリア内戦など常にキナ臭さが漂う不安定な中東情勢に、日本はエネルギー安定供給の源泉を頼っているのが現状だ。原油安の影響による将来的な不安定さや中東危機の高まりにより、原油価格の高騰だけでなく、中東からの輸入ができなくなる事態も考えうる。火力発電が約9割を担っている電力の「安定」供給は、こうした不安定さに支えられているのだ。

日本にできることは、エネルギー自給率を高め、過度な中東依存度を減らすことだが、現状は厳しい。震災前、日本のエネルギー自給率は約20%あったが、原子力発電が徐々に停止するなかで、エネルギー自給率が大きく低下し、2013年はわずか約6%と過去最低の水準まで落ち込んだ。これは、OECD(経済協力開発機構)加盟34カ国のうち33位、ワースト2位である。

エネルギー自給率を高めるためには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーや、原子力発電の比率を高めることが不可欠だ。原子力発電の燃料となるウランも輸入燃料であるが、中東からの輸入はない。また、原子力は一度原子炉に入れると取り替え無しで1年間発電が可能であり、万が一、輸入が途絶えたとしても、その備蓄は約2.7年分と試算されており、LNGが約14日分、石油が約170日分であるのに比べ、はるかに長期にわたる。

政府は、2030年度までにエネルギー自給率を約25%に改善していく方針を掲げている。小山氏はこう強調する。

「昨年公表された『長期エネルギー需給見通し』における“エネルギーミックス”という考え方は、バランスのとれたエネルギー供給を実現して、それを達成していこうとするもの。2030年度の電源構成では、再エネ22~24%、原子力20~22%、LNG27%、石炭26%、石油3%程度となっているが、達成はそう簡単ではないが、日本のめざすべき姿と考えて取り組むべきだろう」

COP21で掲げた2013年度比で温室効果ガスの26%削減目標達成や、本年4月からスタートする電力の小売全面自由化は、原子力も含めた電力需給の安定が大前提であることは言うまでもない。しかし、原油価格や中東情勢に左右されている現在の状況では、これらの達成は容易ではない。

中長期的なエネルギーセキュリティを確立すること、そのための視点を持つことが資源の乏しい日本においては欠かせない。

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