富士経済の発表によると、2014年の抗がん剤市場は8523億円。同市場は今後拡大を続け、23年には14年比で181.1%の、1兆5438億円に達すると予測している。

抗がん剤の市場規模予測

市場の拡大を支えるのは、「分子標的治療薬」という分野の製品だ。近年発売が相次いでおり、14年時点で市場の5割近くを占める。

分子標的治療薬について、同分野の製品「アレセンサ」などを提供している中外製薬は、「疾患の原因や進行と重要な関係のある、ターゲットとなる分子の働きだけを特異的に抑えるようにデザインされた薬剤のことです」(同社広報IR部)と説明する。例えばアレセンサの場合、「肺がん患者さんの2~5%で“ALK融合遺伝子”の発現が報告されています。この融合遺伝子が発現している場合、がん細胞が増殖してしまうことがわかっています。アレセンサは、この原因となる“キナーゼ活性”を選択的に阻害して増殖を防ぎます」(同)。

分子標的治療薬の需要が高まったのは、00年代に入ってからだという。「これまでの薬剤に比べ有用性の高い分子標的治療薬が次々と発売されてきているここ10~15年で、大きく需要が高まりました」(同社広報IR部)。富士経済は、23年には分子標的治療薬の割合が7割に達すると予想している。

(大橋昭一=図版作成)
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