「話にY字路をつくり、Xの一致点に導く」営業トーク

話がうまい人と下手な人の大きな違いは、会話の流れのなかで、いかに分岐点をつくって話題を誘導できるか否かにある。詐欺や悪質業者の使う手口をみると、このことをつくづくと実感する。ワルの話のうまさには思わず舌を巻く。

今年からマイナンバー制度がスタートしたが、システム障害によりマイナンバーカードが受け取れなかったり、同じ番号を2人に出してしまったりといった失態が次々に起きている。今後も、こうした不手際につけ込むだましの手口には、注意をする必要がある。

特に昨年末は、マイナンバー通知の封書がなかなか届かない事態となり、それに便乗するような詐欺が多く発生した。典型的な例はこうだ。

役所の職員を名のる人物が突然訪問してきて、こう尋ねる。

「マイナンバーの通知カードはきていますか?」

「届いていない」と答えると「1万5000円支払えば2時間以内に宅配で送る」と言われ支払ってしまったケース。また、ワルは「マイナンバーの通知は届きましたか」と相手に尋ね、「マイナンバーの手続きを早くしないと、罰金を取られますよ」などと焦らせて、登録料名目でお金をだまし取るケースもある。

詐欺師は、通知カードが届かないという混乱に乗じているわけだが、彼らの巧妙さは、2段構えでやってくる点にある。

電話や訪問で「このたびは、マイナンバーの件で混乱とお手数をおかけして申し訳ありません」と平謝りながら、「マイナンバーが届いていますでしょうか?」と尋ねる。

まず「届いているか、否か」のY字路をつくり、尋ねてくる。

そして「届いていない」と相手が答えれば「お金を払えば、すぐに調べて、送るように手配する」と言い、届いていれば「手続きには時間がかかるので代行します」と言って、費用をだまし取ろうとする。

通知カードが届いていても届いていなくても、どちらに転んでも対応できるようにしている。話に分岐点をつくり、相手の答えに合わせて詐欺を働いているのだ。