臨場感があると伝わっていく
【赤井】私が國學院の大学院で学び、教員になって、もう40年ほど。大学を取り巻く環境も、かつてない速さで変化しています。大学自身がスピーディかつ計画的に大きく変わらないと人材育成の使命を果たし切れません。國學院大學は「21世紀研究教育計画」に従って、時代の要請に応えられる人材育成のため、教育基盤の整備を推進し続けています。
【箭内】大学にもビジョンが求められる時代なんですね。実は「渋谷のラジオ」のコンセプトも「学校」。いろんな分野の先輩たちに、経験と知識を伝えてもらいます。
【赤井】興味深いですね。大学教員も学生に対して伝える、いや「伝わる」講義を常に意識しています。教育は希望どおりに進まない。繰り返し伝えることで100%伝わることを目指しています。
【箭内】例えば「渋谷のラジオ」にも参加してくださる音楽家の谷村新司さん。あの声とテンポで話をされると、すごく伝わってきます。その話を僕が誰かに伝えようとしても伝わらない(笑)。
【赤井】確かに教員にも学生を引きつけるキャラクターが求められます。「講義は再現性のないライブ」というのが私の持論。臨場感を大切にして、食い入るように聞かせる講義を実践しなければいけません。どう伝えるか、どう語るかが、特に重要になってきます。
【箭内】ライブといえば、知り合いのミュージシャンが「大きなホールで、一人の自分が1万人のお客さんと一本の糸で結び付こうとしても何も伝わらない。1万本の糸があるつもりでステージに立つ」と話していました。
【赤井】講義も基本は対面です。その上にいろいろな方法が構築されます。きっとラジオでの語りにも通じるエピソードですね。
日本人らしさを生かしたコミュニケーションを
【赤井】「伝わる」ことを追求するなかで、國學院大學では学生が主体的に学ぶアクティブラーニングにも力を入れています。また、互いに意見を戦わせるディベートなども授業に取り入れています。
【箭内】なるほど。僕は昨年、ある広告制作の講座で「チャーミングに異を唱える」という課題を出したんです。露骨に大声で相手を批判したって伝わらない。チャーミングに反論する努力が日本全体で不足してきた気もします。
【赤井】私たちは、建学の理念である神道精神を「日本人としての主体性を保持した寛容性と謙虚さ」と表現していますが、それにもつながるお話ですね。ディベートでも、いきなり相手を否定するのではなく、いったん受け止めてから話を進めると議論がぐっと深まります。こうした姿勢は、本来の日本人らしさでしょう。
【箭内】まさにそう思います。異質な者同士も寛容で謙虚であれば、互いの話が伝わる。つながることができて、おもしろくなる。「渋谷のラジオ」のステーションメッセージは「ダイバーシティ、シブヤシティ」。新しいコミュニティ誕生のきっかけを提供する存在になれたらうれしいです。
【赤井】私たちもコラボレーションの機会を楽しみにしています。