渋谷に拠点を置く國學院大學の赤井益久学長とこの春、「渋谷のラジオ」を開局する箭内道彦氏。ともに渋谷で「伝わる」ことを追求する2人が、そのために何が求められるかを語り合った。
(左)箭内道彦●やない・みちひこ
渋谷のラジオ 理事長
クリエイティブディレクター
(右)赤井益久●あかい・ますひさ
國學院大學 学長

豊かな多様性をもつ渋谷の街を活性化

【赤井】國學院大學のキャンパスがある渋谷は、文教地区と住宅地区と繁華街が隣り合う、東京都内でもユニークな街です。学ぶにも住むにも働くにも、そして遊ぶにも魅力があふれています。

【箭内】渋谷は“世界最先端の田舎”だと思うんです。斬新なカルチャーや先進的な施策が注目される一方、僕も東北出身ですが、多様な個性の人々が地方から集結している。これも魅力です。

【赤井】その渋谷で4月にコミュニティFM局「渋谷のラジオ」をスタートなさいますね。

【箭内】はい。僕と同じく渋谷を地元として活動する皆さんと、街をますます活性化し、人と人をつなげたいと考えたんです。地域の防災への貢献も含め、ラジオには大きな可能性があると思います。

【赤井】よく分かります。「声」だけが送られ、あとは「余白」。そこに可能性がありますね。いまの大学生は映像をはじめとする情報に恵まれて育ったため、一部分だけをヒントに全体を想像してデザインする力を伸ばす機会があまりなかったように感じます。

【箭内】映像がないから自分の想像力を使う。その力がラジオで鍛えられたら、日本や世界のどこかで辛い状況にある人々にも、もっと思いを寄せられるかなと。

【赤井】そう思います。何でも検索できてしまう現在は、情報を探す楽しさをなかなか味わえない。昔は求める答えにたどりつくまで、寄り道を強いられました。その分、情報選別の力が磨かれたし、幅広い情報が知識としてストックされたものでした。

【箭内】インターネット社会はもちろん便利ですが、そのなかであふれる情報といかに賢く付き合うか。そのヒントを示していくことも、私たちの役割かもしれません。