「仮説立案」「構成・文章化」「ビジュアル化」の3ステップ構成。各ステップの講義&練習問題であなたの資料作成力がぐんぐん伸びる。

影響力の武器

本論から少しはずれてしまいますが、私がプレゼンの際にたびたび読み返している本を紹介しましょう。『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ)という古典的名著です。

この本には、人が意思決定や行動をする際に、6つの心理が働くと書かれています。プレゼンではこうした心理学を踏まえ戦略的に攻めると効果的です。

6つの心理とは「返報性」「一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」(図を参照)。順に説明しましょう。

「返報性」は、人から何かされたらお返しをしなくては落ちつかないという心理。無料お試し品を利用すると、正式に申し込みをしないと「申し訳ない」という気持ちになりやすいという心理も、返報性に当たります。

「一貫性」は、自分の信条など一度決定したことに、人はこだわりを持ちやすいということ。経営哲学としてドラッカーが好きなら、ドラッカーの主張に反したことはしたくないと考えるのもその一例です。会社のミッションに合致したものに「ノー」と言いにくい心理も一貫性に該当します。「(私どもの提案は)御社のミッションにも合致しています」と訴えるのが正攻法です。

「社会的証明」は付和雷同の日本人にありがちな心理で、みんながやっているとなると、「やらなきゃ」と考えてしまう心理。

「競合他社が導入ずみですよ」といった誘導が効果的なこともあります。ただし、この場合、自分たちに似た人や会社と同じ行動をとろうとするところがポイントで、あまりにかけ離れた存在だと、「うちはそんな先進的な企業じゃないから、いいです」と逆効果になることがあるので注意が必要です。

「好意」「権威」はターゲットが社内で親しくしている存在や、尊敬している人物、弁護士やコンサルタントといった外部の専門家などの言い分には耳を傾けやすいという心理。こうした心理を利用して、事前にターゲットが好意を抱く人物や尊敬する人物の協力を取り付けて、口添えしてもらうといった作戦も考えられるでしょう。

「希少性」は、「今だけ」「期間限定」と言われると、ついすぐに決めなければならないと考えてしまう心理。「今を逃すと手に入りにくくなる」「タイムラインは○○だ」という部分を報告・提案の中にさりげなく盛り込むと、ターゲットが焦りを感じ、提案に乗ってくることもあります。