エネルギー関連事業者と消費者
双方に主体性が求められる

一方でこれからの時代、エネルギー関連事業者には何が求められるのか。大庭さんは「同様に、顧客それぞれの状況を把握し、それをきめ細かなサービスにつなげていくこと」と言う。

「例えば、需要パターンに合わせてプランの見直しを提案するなど、エネルギーのプロとして、家庭や企業が気づかないところまでサポートしてくれるようになるのが理想です。単なる価格競争で終わってしまったら、今回のエネルギー自由化の意義が薄れてしまいます」

エネルギー関連事業者と消費者の新たな関係ということでは、日本各地でさまざまな試みが始まっているエネルギーの地産地消も見逃せない。その言葉どおり地域内で生み出された多様なエネルギーを地域内で活用し、エネルギーロスを減らそうとする取り組みだ。こうした動きを成功に導くにあたっても、やはり需給バランスの最適化が鍵を握っている。

「電力については貯めることが難しいいので、つくる量と使う量を合わせなければならない。エネルギーロスを減らすためには、『これだけ使うから、これだけつくる』という状況を生み出さなければなりません。つまり両者のハーモニーが大事になる。これは基本的な話です。しかし少なくともこれまでは、そうした調和やバランスが必要と考えている人は、使う側ではほとんどいませんでした」

ハーモニーをさらに美しく響かせるための道筋を、大庭さんは最後に次のように語った。

「不動産や金融の業界には、包括的なアドバイスをしてくれるファイナンシャルプランナーがいますよね。エネルギー業界にはまだそういう存在があまりいないんです。エネルギーをそれぞれが選んでいくこれからの時代は、エネルギー関連事業者と消費者の“相互主体性”が大事になってきます。消費者の側もエネルギー関連事業者、業界を育てていく意識を持つことが大切でしょう。そうやって互いを高め合うなかで、日本独自のサービスやエネルギーのアドバイザーなどが育ってきてほしいですね」

時代に先駆けてその役割を担い続けてきた大庭さんだけに、言葉には説得力がある。豊かなエネルギー新時代をつくり上げるために、私たち一人一人がまさに主体的にエネルギーと向き合う必要がありそうだ。