世界が注目するアメリカのプレゼンイベント「TED」。見どころは、自分のアイデアを世界に広めたい講演者のトーク内容だが、それ以上に話術や、インパクト十分にして洗練された図解術は勉強になるのだ。

パワーバイトをひたすら唱える!

TEDにはエンターテインメントの要素が含まれているので、そっくりそのまま「仕事」に使うことはできません。ある講演者のスキルを模倣して、実際のビジネスのプレゼンテーションに応用するのはやや無理があります。

しかし、優れたTED講演内容には、トーク術のほかにもプレゼンのエッセンスが詰まり、学ぶことが多い。

その代表格が、図解です。

講演者はいずれ劣らぬ世界の話術の達人。語る内容も「これぞ世界に広めるべき最高のアイデアだ」とみな自信満々です。ところが、トークとアイデアだけでは人に鮮烈な印象を与えるのは困難。年間で表彰されるようなTED講演者は話の重要ポイントに図解などのビジュアルエイド、つまりより確実に理解してもらうための視覚的なオブジェクトを織り込んでいます。

例えば、サイモン・シネックは、偉大なリーダー(スティーブ・ジョブズなど)は人を鼓舞して行動を起こさせるために、まずは「なぜ(WHY)、何の ために……◯◯すべきか」という問いかけをするもので、「どうやって(HOW)?」「何を(WHAT)?」といった問いかけはしないと繰り返し強調しま す。そのうえで、サイモンは「ゴールデンサークル」と呼ばれる3重の円の図を手書きします。

それまで言葉で聞いていたことがビジュアル化された瞬間、そのコア・メッセージの意味することがストンと聴衆たちの腹に落ちるのです。

「HOWやWHATではなく、WHYから始める」。自分の主張やアイデアを核となるフレーズやパワーバイト(強いインパクトを与える端的な言葉)によって聴衆に刷り込みつつ、要所で図解をはさむことで、より人の心に深く刻み込まれるというわけです。

[01]Whyで始める
Simon Sinek:マーケティング・コンサルタント
テーマ「イノベーションを起こすには?」(How great leaders inspire action)

▼「なぜ……なのか?」質問されると人は無意識に考える

図は講演者がプレゼン中に手書きした「ゴールデンサークル」と呼ばれる概念図。周囲を動かすリーダーは常に、「なぜ……なのか?という質問から話し始める」ということを簡略化して見せた。&create代表で著書に『プロの資料作成力』『インパクト図解術』などがある清水久三子氏も、プレゼンの冒頭で右のようなスライドを見せ、問いかけることがあるという。

「start with whyはいわばプレゼンの鉄則です。人は質問されると、自動的に答えようと考え、相手の話に引き込まれてしまうのです」

ゴールデンサークルの講演者はhowやwhatではなくwhyだと繰り返し強調する。「××ではなく◯◯である、という表現も単純明快な印象を残す技術」(清水氏)

▼応用すると……

プレゼン冒頭で問いを投げかける。