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2016年3月9日(水)

再建の鍵を握る男、H.モーザーの価値を語るジョージ・ヘンリー・メイラン氏インタビュー

PRESIDENT Style
取材・文/デュウ 撮影/山下亮一(人物) 写真協力/イースト・ジャパン
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見た目もネーミングも意味深!

H.モーザー「スイス アルプ ウォッチ」。スマートウォッチ風のケースに、自社製機械式ムーブメントを内蔵。機能は時刻表示のみだが、「何よりも重要なのは“アップデート”する必要がなく、いつの日か子どもに引き継げる点」とエドゥアルド・メイランCEOは話す。●18Kホワイトゴールド。ケースサイズ38.2×44mm。手巻き。クーズー・レザーストラップ。300万円(税抜き)。世界限定50本

今年初め、1本の機械式時計が話題となった。米アップル社のApple Watchと見紛うようなデザインで、「スイス アルプ ウォッチ」といういささか意味深長なネーミング。中身は時刻表示のみのシンプルな時計で、いわゆるスマートウォッチに搭載されるようなハイテク機能は備えておらず、それでいて価格は何と300万円。Yahoo! JAPANのトップニュースにもなったほどだから、見覚えのある人もいるかもしれない。この時計を製造したのは、スイス北部、ライン川沿いのシャフハウゼンという町を本拠とする時計メーカー、H.モーザーである。

このH.モーザーの創業は古い。1828年に時計師ハインリッヒ・モーザーがロシアで工房を設立。その後高品質な時計でロシア宮廷などに重宝され、創業者の故郷であるスイス・シャフハウゼンの発展にも貢献した。創業者亡き後、長らく休眠状態にあったが、2002年にブランド再興、06年春のバーゼルワールドで時計業界の表舞台への復活を果たした。

ブランド再興後は、センター針で月表示を行う独特の永久カレンダー、交換可能な脱進機など、独自性が高く、技術的難度も高い機構を立て続けに発表した。これらのメカニズムはH.モーザーの名を時計の愛好家やプロたちに広く知らしめるのに十分だったが、しかしながら、後にそれらのメカニズムにいくつかの問題があることが発覚する。さらに、その後に待ち受けていたリーマン・ショックに端を発する世界的な金融危機は、再興間もないこのブランドを経営難へと陥れた。各国のディストリビューターの中には手を引く者も現れ始め、まさに事業継続が困難になりつつあった2013年、このブランドに光明を見いだし、買収を行った人物がいる。MELBホールディングス会長のジョージ・ヘンリー・メイラン氏である。氏の目には瀕死状態のH.モーザーが「とても大きな財産を持つブランド」に映ったのだという。

MELBホールディングス会長
ジョージ・ヘンリー・メイラン氏

1945年、時計産業が盛んなスイス・ジュウ渓谷で生まれる。スイス連邦工科大学で機械工学を学び、ローザンヌのIMDビジネススクールでEMBAを取得。卒業後、ジャガー・ルクルトなどを経て、85年オーデマ ピゲ入社。97年より同社CEOを務める。退職後の2006年にMELBホールディングスを設立し、現職に就任。同ホールディングスでは医療機器製造や不動産事業も行うが、中核となるのは高級時計ビジネス。11年にオートランスを、13年にH.モーザーを傘下に収める。現在、80名弱が時計ビジネスに従事し、そのうち約50名がH.モーザーの時計づくりに励む。
仕事以外の楽しみは? と質問を向けると「家族と過ごすこと、ゴルフ、そしてクラシックカー」とのこと。カーレースに出場することも多いという。

 
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