ビジネスの師匠はマネックス松本大

【田原】辻さんご自身の話も聞かせてください。辻さんは文系なのかと思いきや、京大の農学部の出身ですね。

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マネーフォワード社長 辻庸介氏の略歴

【辻】生物と経済の両方が好きで進学時に迷ったのですが、高校の先生から「理系から文系にはいつでも行けるから、とりあえず理系に行けば」とアドバイスをいただいて、農学部に進みました。でも、やってみて自分に研究者は向いてないとわかりました。理系は研究の成果が出るまでに時間がかかります。成果が出るのが10年に1回だとすると、人生30年働いたとしてチャンスは3回。それはさすがに嫌だなと。あと、大学の先輩が立ち上げた進学塾を手伝っていたのですが、それがおもしろくて、ビジネスもおもしろいなという思いもあった。それで大学を休学して、アメリカにMBAの勉強をしに行きました。

【田原】どうしてアメリカに?

【辻】文系就職することを決めましたが、そのままではおそらくどこも雇ってくれません。就活する前に何か武器を身につけたいと考え、英語とビジネスを両方勉強できるMBAの半年コースに留学しました。

【田原】帰国後、ソニーに入社される。2001年ですから、社長は出井伸之さんのころですか。

【辻】はい、ソニーがすごく調子がよくて、出井さんも目立っていて、かっこうよかった。私自身、グローバルに活躍したいという憧れもあって、ソニーに決めました。

【田原】ところが、ソニーからマネックス証券に出向される。どういう経緯だったのでしょう?

【辻】新しいネットサービスをつくりたいと思って入社したのですが、配属されたのが経理部門だったのです。配属された以上一生懸命やっていましたが、やっぱり管理部門より事業をやりたいという思いがありました。そんなときにちょうど、ソニーがマネックス証券に出資している関係で、社内でマネックス証券CEO室の募集がありました。それを見て、よしこれだと。

【田原】公募に、よく受かりましたね。僕はマネックスの松本大さんに何度もお会いしていますが、松本さんはあなたのどこを気に入ったんだろう?

【辻】理由はよくわかりません。本当はソニーとのパイプ役として、部長クラスの人を採用したいと考えていたそうです。

【田原】マネックス証券では、どのようなことを学びましたか。

【辻】ビジネスパーソンに必要な土台は、すべてマネックスでつくらせてもらったようなものです。ビジネスはどうやって回るのか。新しい仕組みをつくるのに、必要なお金や人はどう集めるのか。松本さんの下で働いているうちに、そういったことがだんだんとわかってきました。

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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