【田原】アマゾンや楽天は、どうしてわかりやすくしないんですか。

【山田】第一世代のインターネットサービスは効率重視。きめ細かい対応をしない代わりに、サービスを安く提供してくれます。ネット証券もそう。営業マンがいない代わりに、売買手数料を抑えているわけです。

【田原】Zapposやメルカリは、逆のことをやっているのですか。

【山田】そうです。Zapposは通常の問い合わせどころか、カスタマーサポートに何を聞いても構わないと言っています。極端な話、明日の天気を問い合わせてもいい。ホテルで言うとリッツ・カールトンが顧客の要望にけっしてノーと言わない接客をしていますが、それに近いです。

【田原】お金がかかりませんか。

【山田】たしかにお金はかかります。でも、丁寧な対応をした結果、ファンがついてリピートしてくれたら、いずれ収益として返ってくる。僕らもユーザーとそういう関係を築くことを目指しています。

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メルカリ社長 山田進太郎氏の略歴

【田原】山田さんは大学4年のときに楽天から内定をもらって、インターンとして働き始めたそうですね。

【山田】当時楽天はまだ20数人ぐらいでした。僕はオークションをつくるチームでした。世界最大級のオークションサイト、イーベイの規約を調べたりしていました。三木谷浩史さんと直接ミーティングする機会も多く、ビジネスの基礎力をつけさせてもらいました。

【田原】でも、楽天には入社しなかった。これはどうしてですか。

【山田】壮大な勘違いをしたんですよね。楽天でオークションをゼロから立ち上げるために、競合の状況を調べたり、独学でプログラミングも覚えました。結局、立ち上げたサービスはヤフオクにかなわなくてコテンパンにされるのですが、サービスの立ち上げを通して学んでいるうちに、これなら自分もフリーでできるんじゃないかという気がしてきて、内定を辞退しました。

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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