未来への不安で結婚には慎重

──結婚を遠ざける今どきの若者たちが抱える“個人の事情”とは?

今の若者が抱える3大問題は、家族、将来、恋愛です。恋愛については「恋愛感情がない」とか「異性と付き合ってもセックスはしない」など、価値観も多様化しています。

高度成長期には社会全体に上昇機運がありました。将来についても「なんとかなる」と考えたのか、恋愛したらセックスをしてそのまま結婚――という感じで、皆少ない選択肢の中でも早めに結婚していました。

ところが今は社会が固定化しており、選択を誤ると脱落するのではという不安がいつもつきまといます。そのため若者たちは「確実に未来を読みきりたい」と思っています。

特に女性は出産期限から逆算して結婚を考えるのでなおさら慎重になって、価値観の一致、収入の安定、自分の仕事や趣味への理解など、結婚の条件がどんどん厳しくなっていくのです。

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恋愛の先に結婚を意識することなく、純粋に恋愛気分を楽しめるBL(ボーイズ・ラブ)が人気なのも、そうした重圧の裏返しではないでしょうか。

性に関わる画像や動画に簡単に手が届き、「二次元」で満足しているともいえるでしょう。一方で、性に対する個人の意識が多様化しているにもかかわらず、メディアはセックスについてパターン化したイメージばかり発信しています。若い男女はそれに違和感や抵抗を覚え、性から遠ざかっているのでは、とも考えています。

 
船曳建夫(ふなびき・たけお)
1948年生まれ。 東京大学大学院教授。専門は文化人類学。ケンブリッジ大学大学院社会人類学博士課程修了(Ph.D)。主著に『二世論』『「日本人論」再考』『旅する知』。編著に『知の技法』シリーズなど。