今年5月、主要国のエネルギー担当大臣による国際会議「G7北九州エネルギー大臣会合」が開催される。北九州市での開催が決まった背景には、同市の先進的なエネルギー政策がある。その独自性とは──。

“エネルギー文化”を世界に発信する

千歳昭博●ちとせ・あきひろ
株式会社北九州パワー
代表取締役社長

1972年東京ガス(株)入社。環境分野(下水道、水道、清掃工場など)の技術開発、営業開発を担当。2006年東京エコサービスに出向。10年よりごみ発電電力小売事業に携わる。15年12月より現職。

福岡県北九州市。九州第2位の人口規模を誇るこの街で、エネルギー関連の先進的な取り組みが着々と進行していることをご存じだろうか。

風力、太陽光、バイオ燃料、小水力など多様な再生可能エネルギーの施設を擁し、一方で本格的なスマートコミュニティの実証事業を実施。現在も自治体が中心となり、「北九州市地域エネルギー拠点化推進事業」を進めている。地域のエネルギーを自らマネジメントする──。その実現に重要な役割を果たす(株)北九州パワーも、昨年12月に新たに設立された。

「北九州パワーの事業は、電力の小売販売。北九州市と地元の企業、金融機関が株主となっており、まさに地域密着の電力事業を展開する予定です」

同社の代表取締役を務める千歳昭博社長はそう説明する。そして、市と産業界が一体となって新会社を立ち上げた意義について続けた。

「地域内で生み出したエネルギーを無駄なく活用するには、そのエリアの電力事情などを正確につかむ必要があります。そう考えたとき、それぞれに地元の特性を熟知する官と民の連携はとても有効。エネルギーの地産地消を成功させる鍵は正しい現状把握です」

北九州パワーでは4月の電力供給開始に向け、市内の公共施設や民間事業者のこれまでの電力使用状況を分析。エネルギー価格の変動なども考慮しながら数千とおりのシミュレーションを行い、需給バランスを最適化する方法を徹底的に検証している。

「例えば、学校施設と24時間稼働の工場では、1日の電力使用のパターンがまったく異なります。市内というエリアに範囲を限定すれば、そうしたことを一つ一つ踏まえた細かな需給調整が可能になるのです」(千歳社長)

さらに同社では、将来、地元企業に対してエネルギーマネジメントのコンサルティングも行っていく計画だ。電力とあわせて、節電や省エネのノウハウを提供していこうというわけである。

「市内の産業をエネルギーの側面から支え、低炭素社会を実現していく。これが当社の使命です。私自身、長くエネルギー関連企業に身を置いていますが、今回北九州へ赴任して感じるのは、市全体に環境、エネルギーの分野で“他の地域をリードしていく”という強い思いが息づいているということ。発電事業者と地域社会のつなぎ役である私たちも、北九州のエネルギー拠点化の一翼を担っていかねばなりません」と千歳社長は言う。そしてG7北九州エネルギー大臣会合の開催にあたっては、地域の“エネルギー文化”を世界に発信したいと抱負を語る。

「衣食住などと同様、エネルギーにも地域固有の文化があるはず。そのなかで培われた“資源を余すことなく生かす知恵”は、世界のエネルギー問題の解決にもきっと役立つはずです」