▼竹島を取り返すのは今のままでは難しい

韓国もまた反日教育によって、国民の日本に対する歴史認識が大きく歪んでいる。朝日新聞が捏造した部分はあったにせよ、従軍慰安婦が存在したのは事実だろう。しかし朴槿恵大統領の父親である朴正煕大統領も米軍慰安婦制度をつくっていたわけで、それに目をつぶって日本の従軍慰安婦問題だけを声高に責め立てるのはフェアではない。そもそも朴正煕大統領の時代に「前に進むために日本統治時代の問題はすべて清算しよう」ということで日韓は国交を回復し、日本からの資金援助と技術供与で韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を果たした。そういう歴史もきちんと直視すべきだ。

竹島問題については、歴史を遡れば領有権の優位性は日本にある。しかし李承晩ライン(1952年に韓国が日本海・東シナ海に一方的に設定した軍事境界線)が引かれて以降、韓国が竹島を実効支配してきた。「実効支配した者勝ち」という世界共通ルールからすれば、竹島を放置していた日本の負けだ。軍事的に取り返すしかないが、竹島を守ることに狂信的なまでに国民の意思統一ができている韓国に対して、日本はそこまでできていない。

こうして見ると、日本側の歴史認識を見直すだけで両国関係が劇的に向上する相手といえば、やはりロシアである。極東ロシアには600万人の人口しかいない。対して中国は隣接する東北三省だけで1億5000万人いる。この圧倒的な人口差にロシアは恐怖感を抱いていて、ウクライナ問題のような突発事故が片付いたら極東開発をやりたいのがプーチン大統領の胸の内。日本と平和条約を結んで、日本の資本や技術、企業を極東ロシアに呼び込むことは優先順位の高い課題なのだ。

しかしながら、アメリカが演出した歴史の歪曲とそれに基づく日本の間違った歴史教育によって日本人は70年間洗脳されてきたために、胸襟を開いてロシアと将来を語ることできなくなっている。

日本人が歴史を見直して、アメリカのバイアスを取り除いた話し合いを求めれば、ロシアは喜んで応じると思う。ロシアと平和条約を結ぶ利点は大きい。結果、プーチン大統領のいう「引き分け」、つまり面積等分による北方領土の返還という成果も十二分に期待できる。エネルギー問題や使用済み燃料の保管などでロシアに依頼したい項目もたくさんあるし、ロシアも日本に頼みたいことが山のようにあるだろう。外務省や時の政府に任せず、我々個人が戦後史の空白部分を訪ねる、という作業は近隣諸国との軋轢を抱える日本にとって現在および将来の大きな希望につながる重要な作業なのである。

大前研一
1943年生まれ。マッキンゼー&カンパニー本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任。現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長を務める。著書多数。最新刊は『大前研一日本の論点2015.16』。