【茂木】もともと女性はおしゃべりも上手でコミュニティ形成能力に長けている。社会の状況が変化していくことで、そんな女性の強さが生かされる時代がきているように思いますね。

【山極】男性が単純な力や社会的地位で女性を射止める時代はもう終わりつつありますからね。むしろ女性のパートナーであったり、女性に奉仕したりするような男性が好まれつつある。

【茂木】女性の変化に関係するかもしれませんが、日本では少子化問題が深刻化しています。解決策はあるのでしょうか。

【山極】少子化問題は単体の母子にお金をかけるのではなくて、地域で子どもを育てる仕組みをつくらないと解決しないでしょうね。メスが単独生活するオランウータンは7年から9年に1度、子どもを産みます。また大きな群れをつくるけど子どもをつくったあとはわりと単独で行動するチンパンジーは5年から6年に1度、ゴリラはだいたい4年に1度子どもを産みます。この3種を比べると、母子が単独になればなるほど基本的に出産間隔が延びる傾向にある。つまり、メスの独立性が高まるほど少子化傾向なのです。ヒト科の類人猿はメスが親元を離れて子どもを産み育てるから、子どもの面倒を見てくれる補助者が周りにたくさんいないと次の子どもをすぐには産めない。今、人間が子どもを産まなくなっているというなら、その補助者を支援しないといけない。一緒に食事をとることや、子どもをともに育てることで、家族というつながりは成り立ってきたのですが、個食が台頭し、家族がともに食事をとる機会が減っている。シングルマザーも増えた。家族という拠り所を失って、何にも頼れなくなる時代がくるとすると、これはなかなかつらいでしょうね。

茂木健一郎
脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
1962年、東京都生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。
 
山極寿一
霊長類学者・人類学者。京都大学総長。
1952年、東京都生まれ。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士課程修了。カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンター、京都大学霊長類研究所などを経て2014年10月から現職。
(森本真哉=撮影 Getty Images=写真)
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